第177幕
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「商談?」
「そうじゃ。蓮蓬は幻の傭兵部族と呼ばれるほど神出鬼没の種族。レーダーにもかからぬ特殊なあの母船を広大な宇宙から捜し出すんは骨が折れる。だからおいしい商売話を持ち込んでヤツらを釣り上げる」
「おいしい商売って……一体何を売るっていうんですか?」
「ちょっとやそっとのせこい商売ではひやかしにも来んじゃろう。じゃこんども、この大商いヤツらも無視できまい……地球を売るぜよ!」
「地球を売るー!?」
「これから地球に乗り込む連中じゃ。兵力、武器共にいくらあっても足りん。我が船団の貨物に大量に積まれた武器と快援隊による支援。悪い話ではなかろうよ」
辰馬の話を背にし、準備を進める陸奥へと声をかける。
『一人で平気か?』
「何を言うちょるか。商談事は慣れとる」
『そうじゃねぇ』
商談が上手くいくのかという不安で声をかけたのではないと首を横に振ると、陸奥は訝しげに海を見つめた。
『傭兵部族の中に一人で行くことの意味分かってんだろ』
「ああ、そういう意味か。心配は無用じゃ」
『一人くらいついて行った方がいいだろ』
あっちはあっちでやってるから自分がついて行こうかと申し出たのだが、陸奥は要らんの一点張り。もし陸奥が蓮蓬どもに囲まれるようなことがあったらどうするのだと食い下がると、何故か陸奥に睨まれた。
「おまん、わしが弱い言っちょるんか」
『いや、そういうわけじゃねぇけど』
「おまんらは地球侵略の阻止だけ考えてればええぜよ。こっちの事は気にするな」
それに、と続けた陸奥に海はこれ以上口出しは無用かと開いた口を閉じた。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
『己の失態は己で拭う、か。なんとも男前な副官で』
「え?なに?」
『なんでもない』
商談へと行った陸奥を見送る海たち。
エリザベスの母艦へと来た海たちはバレにようにとエリザベスと似たような着ぐるみを被った。
辰馬の頭に似せたもじゃもじゃの髪をしたエリザベスと、桂に似せた髪の長いエリザベス。そして銀時の天パとキレ目な黒目のエリザベス。
「海、もうちょいこっち来い。そんな離れてたらバレるだろ」
『大丈夫だろ。今んとこ俺たち以外誰もいなさそうだし』
銀時の着ぐるみがやけに凛々しく見えるのは、中に海が居るから。
銀時からなるべく離れようとしたのだが、腰を抱かれて引き寄せられてしまった。
「いいから。こっち来いって」
『暑苦しいだろうが。大体、なんでお前と一緒なんだよ』
「しょうがねぇだろうが。着ぐるみが足んなかったんだから。ここに入るの嫌なら新八みたいになるか?」
見てみ、と声をかけられてエリザベスの嘴を開いて外を見る。そこには全身白塗りの新八がブリーフ姿で地団駄を踏んでいた。
『……さすがに嫌だ』
「だろ?俺も海のあんな姿見たくねぇし。それに」
『なに……!』
「こうして二人きりになれたし?」
嘴を閉じてしまえば暗くなる着ぐるみの中。薄らと目の部分から差し込んでくる光で銀時の顔が見えた。
「なぁ、さっき何考えてたの?」
『さっきって……』
「また余計なこと考えてたんだろ」
ズキっとした痛みが頭に広がり顔を歪める。たんこぶの周りをなぞるように銀時の指が動く。
『痛いって言ってんだろうがッ』
「じゃあ言えよ。何考えてたんだ」
『それは……お前に言う必要ないだろ』
「隠し事?ふーん?なら言いたくなるようにするだけだけど?」
頭を触っていた手が下がり顔へと触れる。親指が唇をなぞっていく。
「海」
『銀……!』
やめろ、の声は銀時の口内へと消えていった。口を優しく塞がれ、至近距離で混じり合う視線。少し怒っているように感じた目にいたたまれなくなって目を閉じた。
息継ぎが上手く出来なくて苦しさに悶え出した頃、着ぐるみがグイッと引っ張られた。
「イチャつくのは後にしてもらいたいんじゃが」
「……うっせぇな。後でも今でもいいだろうが」
「おまんらの周りだけピンク色なのわかっとるか?甘ったるくて吐きそうぜよ」
「お前は船酔いで吐いてるだけだろうが!!」
ゲロゲロと吐き散らかす辰馬にキレ散らかす銀時。やっと口を離してもらえた海は必死に呼吸を整えていた。
『ばか、やろ……死ぬかと思った……』
「お前は鼻で呼吸する事覚えような?それともなに?銀さんとキスするのに夢中になっちゃった?」
『はっ倒すぞお前』
にやにや笑う顔を睨みつけて足を踏む。痛そうにもがく銀時を鼻で笑って離れた。
「かーわい」
『うるさい』
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