第200幕
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『あ……』
全ての記憶が戻った今、理解したくない現実が目の前に突きつけられている。
『銀……時』
大切な幼なじみが。この世で最も愛している人が死んでいる。そんな事実を目の当たりにして冷静にしていられる人間がどれだけいることか。
『そんな……嘘だろ……お前、俺を……』
自分を置いて死ぬなんて。
『銀時……!おい、ふざけんな!!なんで、なんで!!』
ずっと隣にいると思っていた存在が呆気なく消え去る瞬間。まさかこんな形で銀時の死を迎えなくてはいけないなんて想像もしていなかった。
『銀時!やだ……俺……待って!』
ボロボロと涙を零しながら何も言わない銀時の身体に縋り付く。いつもなら笑って宥めてくれるのに、今はもう何もしてくれない。
もう彼が笑う姿を見ることは出来ない。
『銀……銀!!なんで、なんで置いていくんだよ!置いていくくらいなら俺も一緒に──』
「もう無理。見てらんない」
連れてって、と言おうとした海の背中へとどさりと何かが伸し掛る。その声は紛れもなく銀時の声。
「ごめん、海。お前の記憶取り戻すためとはいえやり過ぎた。悪い」
『ぎ、ん?』
「ごめんな。大丈夫だから、ちゃんと俺は生きってから」
恐る恐る振り返るとそこには生きている銀時がいた。だが海の前には倒れている銀時がいる。
『なにが……』
「うん。ちゃんと説明すっから。だからもう泣き止んでな?」
でないと胸が痛くて仕方ない。と言って苦しそうに笑う銀時。それは幾度となく見た表情で、海は確かに銀時が生きているという安心感で力が抜け、ほろりとまた涙を流した。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
『銀時のカラクリ?』
「そ。新八と神楽が俺の代わりになるやつを源外のジジイに作らせてたんだよ。お前は出張で居なかったから知らねぇと思うけど」
『それでアレを作ったって?』
「そういうこと」
銀時の死体もとい銀時似のからくりを横目に海は銀時が企てた話を聞いていた。
海の記憶を取り戻すために銀時の死をでっち上げた。当然、本人が死ぬ訳にはいかないので、急遽源外の元に行き廃棄処分になっていた銀時代理用からくりを新八と神楽に持ってこさせ、ここに寝かせることによって銀時が死んだと装った。
そして海は銀時の予想通り信じて記憶を取り戻すことに成功。笑い話になるようにタイミングを見計らって出ていくるつもりだったのだが、海の泣きじゃ来る姿に良心が痛んで、すぐに顔を出すことにしたとのこと。
「本当に悪かった。でも、こうするしかなかったんだよ」
申し訳なさそうに俯く銀時に海は何も言わなかった。怒ることよりも先程見た事が全て嘘だったということの安堵感が強くて何も言えないのだ。
『もういい……もういいから』
「海?」
『生きててくれたら……それでいい』
また泣き顔を見せたら銀時は困った顔をするだろう。顔を隠すように銀時に抱きつき首元へと擦り寄る。背中に回った腕は海を強く抱き締めた。
「おかえり、海」
『ただいま』
もう決して忘れない。何があっても。
この温もりを忘れることはしたくない。
二度とあんな馬鹿な真似はしないと海は誓った。
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