第198幕
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"残念だが、お前は銀時のことを思い出すことはねぇよ。最初からお前の負けだ"
源外の元へ行く道中、金時に言われたことを思い出していた。
負け、ということは記憶を失う前の自分は金時と何らかの取引でもしていたのか。勝算の見込みのない理不尽な取引を。
『何を考えてるんだ俺は』
そんな事をするなんて正気ではない。
何を取引の材料にされたのかは知らないが、相手の罠に嵌るようなことをするだなんて。
『……まさか坂田のことじゃないだろうな』
銀時のことを思い出せない事が負けに繋がることなのだろうか。最初から負けているということは、海が銀時のことを絶対に思い出せないようになっているのかもしれない。
金時と行われたであろう取引は最初から海に勝ち目などなかった。きっと、その事は自分も分かっていたはずだ。
負けるとわかっていても、それでも海は金時の条件を飲んだ。一体、自分は何を交渉したのだろうか。
「遅い」
『あっ……』
「どこほっつき歩いてんだよ。心配しただろうが」
いつの間にか源外の家についていたらしく、海を出迎えた銀時は不機嫌そうに腕を組んで店先に立っていた。
『遅れて悪い』
「無事ならいいけどよ。あんまフラフラすんなよ。お前だって──」
"銀時のことを思い出すことは無い"
「街のヤツらがどう思ってんのかわかんねぇんだから──」
"お前の負けだ"
「おい、海!聞いてんのか?」
『思い出せないんだ』
「は?なに?」
『もう少し……もう少しなのに』
「海?」
『俺はお前のことを思い出せない』
「なに言って……」
金時の言葉が呪いのように海にまとわりつく。思い出さなければならないと焦るほど、海の記憶は遠ざかっていく気がしてならない。
銀時は自分のことを知っているのに。自分は何も覚えていない。海の身を案じてずっとここで待っていてくれたのになんの感情も湧いてこない。
ただただ、胸だけが痛んだ。
「海、そんな焦ることはねぇよ。一生思い出せないわけじゃねぇんだから」
だから心配することは無いといって励まされたが、海は嫌な予感しかしなかった。
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