第198幕
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「なにその顔。銀さんが死ぬとでも思った?」
『別に……』
「はいはい。思ったんですねー、大丈夫ですー、そんな簡単に死にませんからー」
『シバくぞてめぇ』
何事も無かったかのように戻ってきた銀時はへらりと気の抜けた顔で笑い、海の頭を乱暴に撫でた。
銀時が女と共に落ちてきたのを見た時、ぞわりと鳥肌がたった。銀時が死ぬかもしれないと思った瞬間、目の前が真っ暗になり何も考えられず、落ちていく姿を見つめることしか出来なかった。
地面に落ちた衝撃で辺りに砂埃が舞う。助けられなかった、という後悔が海の中でグルグルと渦巻く。
『坂田……嘘だろ……おい!!』
人混みを掻き分けて銀時が落ちた場所へと向かうと、定春と神楽、新八が落ちてきた銀時を受け止めていた。
彼らのおかげで銀時と女は怪我ひとつなく済んだ。あの高さから落ちたのに生きているのは奇跡だと民衆がどよめく中、たまが銀時の元へと駆け寄る。
その後を海も追おうとしたが、足が動かせなかった。靴底に接着剤でも付けられているのかと思うほどビクともしない。手も小刻みに震えていてまともな状態ではなかった。
『なんだ……これ』
こんなこと一度もなかったのに。風邪をひいた時のような寒気に海が慄いていると、銀時がこちらへと戻ってきた。
「なんつー顔してんのよ。お前は」
『坂田……』
「ほら、ここにはもう用はねぇから行くぞ」
震えて動けずにいた海の手を取り銀時は歩いていく。先程では自力で動けなかったのに手を握られた途端、身体の自由が戻った。手から伝わってくる銀時の熱に酷く安堵している自分がいて、益々疑問が募っていく。
「これからどうすっかな」
ぼそりと銀時が呟き、その声につられて海は顔を上げた。銀時の後ろを歩く自分には彼が今どんな表情をしているのかは分からない。だが、言葉から伝わってきたのは哀愁。
どこか寂しげに見える背中に声をかけようと口を開いたが言葉にするのはやめた。その代わりにと、海は繋がっている手を強く握り返す。慰めにはならないかもしれないが、今の海にはそれくらいしか出来ない。
今の自分には銀時がここまで落ち込む理由が分からないから。
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