第197幕
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『ん……』
ぱち、と目を開けた先は見知らぬ部屋。
『寝すぎた、か』
気だるい身体を何とか起こし、顔を洗うべく洗面台へと向かった。
冷たい水で顔を洗うと、ぼーっとしていた頭が段々とハッキリしてくる。
『たまと坂田は出かけてんのか』
朝方、たまがホテルに来ていたのは覚えている。一緒に来て欲しいと言っていたが、海はベッドから動くことが出来なかった。一週間近く休みが取れていなかった身体は休息を欲していて、起き上がるのを拒んだ。
銀時が止めてくれなかったら。ここまで休むことはなかっただろう。
『幼馴染にしては……』
やたらと距離感が近い気がする。同じ幼馴染の桂でもあんなに近くはなかったはずだ。銀時だけが海に対して甘い気がしてならない。
『いや、もう一人いたか。なんかやたら甘やかしてくるやつ』
どこで何をしているのかは分からないが、彼もまた海に対して甘い男だ。
そのせいでいつも銀時と喧嘩を──
『さ、かたと……喧嘩……?』
思い浮かんだのはかつての戦場。白と紫が騒ぎながら天人を斬り伏せていく姿。晋助のことはハッキリと思い出せるのに、もう一人の方はモヤがかかっていて顔がわからなかった。
『誰なんだ……!』
思い出そうとすれば頭がずきりと痛む。晋助と喧嘩しながら戦う男の背中へと手を伸ばす。こちらへと顔を向けてくれたらすぐに分かるのに、相手は目の前の天人に集中していて海の方を振り返らない。
『お前は……誰なんだ!!』
真っ白の服をやっとの思いで掴んだ。驚いた相手がこちらを振り返ろうとした時──
「海?どうした?」
名前を呼ばれてハッと我に返ると、目の前にいたのは驚いた顔をした銀時。掴んだと思った物は彼の服だった。
『なんでも……ない』
「大丈夫かよ。顔真っ青じゃねぇか」
『別になんともない』
男の顔を確認できずに終わったことが悔しい。もう少しで顔が見れたのに。
俯く海に銀時は首を捻り、たまと顔を見合わせる。再度なんでもないと呟き、海は今日のことを聞くことにした。
『それよりも上手くいったのか?』
「ゔ……そ、それは……」
『ダメだったのか』
「ダメでした」
「ダメでしたじゃねぇよ!お前もアイツらと一緒にノリノリだったじゃねぇか!」
「あの曲でノレない人はインポです」
「お前ツイてねぇだろうが!!!」
喚く銀時と静かに反論するたま。その姿があやふやな記憶とリンクする。先程思い出した光景もこんな感じだった。ここでいつも桂が止めに入ろうとするのだが、何故か三人で言い合う形になる。それを辰馬と一緒に呆れながら見るのだ。
『ったく……お前らはすぐに喧嘩する。少しは大人しくできないのかよ。図体だけでかくなって、頭はガキのままかよ』
こう言って海も仲裁に入る。それでも止まらなければ、二人の頭を殴って止めるしかない。
そう思って海は手を上げた。
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