｢まずは海様の……いえ、皆様に銀時様のことを思い出してもらわなければ｣


｢できるのか、んなこと！？｣


｢はい。金時が書き換えた記憶と銀時様が過去に行われた記憶の誤差。違和感を刺激すれば記憶の金メッキが剥がれるかもしれない。金時を倒すには皆様の力が必要不可欠です｣


｢……記憶の誤差って……こいつはどうなるんだよ。誤差も何もスッカラカンじゃねぇか｣


隣にいる海の頭へと手を乗せ、ぽんぽんと軽く叩く。銀時の記憶も金時の記憶も持ち合わせていない海はどうやって戻せばいいというのか。


｢そこは愛の力でお願いします｣


｢愛の力そこまで万能じゃねぇだろ！｣


｢銀時様と海様なら大丈夫です。日頃から無駄にイチャイチャしていたお二人ならすぐにパッと思い出せます｣


｢んな無茶な……｣


｢出来なければ海様はそのままです。それに……｣


｢それに？｣


｢海様は金時に狙われています。銀時様のものをすべて掌握しようとしている彼は海様のことも自分の手の内に入れようとしていますから｣


それは銀時がもっとも恐れている事だ。


金時の記憶が無いということに安心したのもつかの間、海は金時に狙われているというではないか。


『会ったら壊せばいいんだろ？簡単じゃねぇか』


｢うん。なんか恨みこもってるように聞こえるのは俺だけかな？さっき何か思い出させちゃったからかな？｣


ゆらりと出てきたのは殺気。金時に会った瞬間、彼の首が宙に浮いていそうだ。


『それで？俺は何をすればいいんだ？』


｢海様には銀時様の味方になっていただきたいです｣


『こいつの？』


これまた嫌そうな顔で海は銀時を睨む。


｢先程説明した通り、海様は銀時様の幼なじみです。お友達を助けてあげてください｣


『そこまで暇じゃないと言ったはずだろ。屯所に帰ったら書類だってある。見回りの方だって──』


｢屯所に戻られてませんよね｣


｢え？｣


たまの一言に海はグッと押し黙る。


｢屯所でも金時の話が出ていて居心地が悪い。違いますか？｣


｢え、なに？お前屯所に帰ってねぇの？｣


『うるさい。別にいいだろ』


｢いや、良くねぇよ。寝泊まりどこでしてんだよ｣


『お前には関係ない！』


｢関係あるから。海に無くても俺にはあんの｣


なぜ？という表情。今の海には理解できないことだろう。だが、その問いに銀時は答えなかった。


｢はぁ……ったく、そこらへんフラフラしてんだったら俺のそばにいろ｣


『なんでお前とッ！』


｢守ってやっから。プラモデルに狙われて、そんで常にプラモデルの話なんかされてたらそりゃ嫌にもなるわ｣


｢海様、銀時様のそばに居てください。その方が一番安全かと思われます｣


言い返すことも出来なくなった海は無言を貫いた。頷くこともしない海に銀時は苦笑を漏らす。


｢素直でいい子｣


ぽん、と頭を撫でると、海の右足が銀時の脇腹へと入った。




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