第195幕
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『そもそも、お前はどっから湧いて出てきたんだ』
「そんな虫みたいに言わないでくれる!?湧いて出てきたんじゃなくて、俺は元々ここに居るの!」
『知らねぇ。お前なんか見たことも無い』
「だからそれは記憶を失ってるからだろうが!」
一向に進まない銀時と海の会話にたまがため息をつきながら口を挟む。
「まずは自己紹介から始めましょうか。そっちの方が手っ取り早いです」
「自己紹介だぁ!?今更そんなもんしてどうすんだよ!」
「海様は銀時様のことを何一つ覚えていないんです。そんな状況で銀時様の味方になっていただけるとは思えません。まずはお友達からです」
「お友達どころか恋人ですけど!?夜はお盛んな俺らですけど!?!?」
「それは記憶のあるときの海様です。今はまっさらなんです。銀時様に汚される前の海様なんですよ?」
「何その言い方。俺が海を汚したみたいな」
「みたい、ではなく"汚した"です」
「なんなのお前さっきから!」
『それは俺が聞きたい。さっきから何の話してんだよ』
たまと言い合っていたせいで海を放置していたことに気づき、銀時は勢いよく海の方へと顔を向ける。海は定春の肉球によって両耳を塞がれている状態。腕を組みながらこれでもかというほど銀時を睨んでいた。
「なんでお前耳塞がれてんの?」
『知るか。急に定春が……』
「ワンッ」
「流石です定春様。銀時様の汚らわしい発言をすべて防いでくれたのですね」
「だからなんなの!?人のこと汚物でも思ってんの!?」
「いえ、ゴミです」
「そろそろ俺泣いていい?」
振り出しに戻る。
「俺は坂田銀時。万事屋の本当の店主で、お前とは幼なじみだよ」
恋人、というのは伝えずに銀時は簡潔に自分のことを説明した。昔のことまでは話す必要もないだろうと省いて。
『幼なじみ、ね』
「なんだ?なんか思い出せそうか?」
『……いや、何も』
何か言いたげな顔をしていたが、たまを一瞥したあと海は口を閉ざした。きっと攘夷志士の時のことを聞きたかったのだろう。二人きりであれば教えてあげられたのだが、ここにはたまがいるし、町の人間もいる。
真選組の服を着ている海が攘夷志士だったという過去の話をここでするわけにもいかない。
「まぁ、なんだ。気になることがあるならいつでも聞けよ。教えてやっから」
『…………あぁ』
随分と間を空けてから海は頷く。
少しだけ、ほんの少しだけだが、海の目が少しだけ柔らかくなった気がした。
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