第195幕
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「で?なんで万事屋に?」
「まずは敵を知るところからです」
朝方、銀時とたま、定春と目が覚めた海は万事屋へと来ていた。手っ取り早く坂田金時を倒せばみんな元に戻るのではないかと意気込む銀時を制止して、たまは銀時に紙の束を手渡した。
「説明書?おいおい、ふざけんなよ。あいつの情報がこんなんに書いてあるわけねぇだろ。プラモデルじゃねぇんだよ」
バカバカしい、そう思いながら冊子の表紙を見つめていると、万事屋の戸が開く音がした。中から出てきたのは坂田金時。風呂に入っていて出てくるのが遅れてしまった、と謝りながら手に持った頭を洗っていた。
『うわ……』
「は……?なに?なんなの!?」
『あいつはたまと同じカラクリって事か?』
「そうです。坂田金時とは新八様と神楽様の依頼で作られた源外様が作りし代理用万事屋リーダー。銀時様の弱点をすべて克服したパーフェクトな坂田銀時。超合金製完全体、坂田銀時二号機。つまり、金さんです」
「お、俺の弱点を……すべて克服したパーフェクトな坂田銀時……えっ、何?要するに平たく言うと……どういうこと?」
固まっている銀時の手から海は金時の説明書を取り上げてパラパラと数枚流し読む。
『簡単に言えばプラモデルだな。プラモデルにして精巧に作られているが』
「そ、そうだよね!プラモデルにしては完璧すぎるよねぇ!」
『でも、人様に害を及ぼしてないんだろ?それならからくりといえども万事屋の店主でもいいんじゃないか?』
「良くないから!!全然良くないから!!お前っ……」
金時が銀時の役を演じているということは、海は金時のものになってしまう。それだけは許せない。
「ダメだから。絶対にそれだけは」
プラモデルと聞いて騒いでいた銀時は静かに海を真っ直ぐ見つめる。その目に海はただ訝しげに銀時を見返す。
『俺はお前を構ってる暇はない。万事屋の店主がお前だろうとプラモデルだろうと俺には関係ない』
「いえ、関係あります」
『どこにあるんだ。俺は坂田銀時という男も、坂田金時というプラモデルも知らない。大体、万事屋は神楽と新八でやってただろ』
「えっ、そんなに記憶抜けてんの?こいつ」
銀時のことを忘れていると言ったが、まさかそこまで酷いとは思わなかった。万事屋を新八と神楽だけで営んでいると思っていたなんて。
「いいえ。万事屋は新八様と神楽様、そして銀時様の三人で営んでいました」
『それで?店主の座をプラモデルに奪われたから取り返すのに手を貸せと?悪いがそんなに暇じゃない。自分のことは自分でやれ』
奪われる方が悪い。そう言って海は銀時のことを鼻で笑い、万事屋の階段を降りていく。
確かに一年もほったらかしていた自分が悪い。そのせいで横から奪われたのだから。でも、奪われたのは海だって同じじゃないのか。
「お前だって本当の記憶失ってんだろうが」
『は?何わけわかんねぇこと言ってんだよ。何も忘れてなんかいない』
「じゃあ、首から下げてるもんの意味わかるんだろうな?」
階段を降りていく足がピタリと止まる。
海の胸元には銀時が贈った指輪があるはずだ。倒れていた時に首から下げているのが見えたから。
記憶があるならその意味は分かっているはず。
『……知らねぇよ』
ぽつりと海は呟く。
「だろうな。それはお前に記憶がねぇからだよ」
奪われたのが悪い。ならば記憶を失くした海も銀時と変わらない。
そう言って笑う銀時に海は恨めしそうな目をし、銀時を蹴り飛ばした。
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