第194幕
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「忘れちゃいねぇ……忘れるもんか」
新八と神楽。お妙に九兵衛、お登勢やキャサリン、吉原の月詠にカラクリのジジイ。
一人一人の顔が思い浮かんでは、銀時の胸を熱くさせる。誰一人として欠けることなく、みな銀時の仲間だ。
たった一人、他の連中よりも一番輝いている人物がいる。銀時の顔を見ては呆れた表情を浮かべる彼。また面倒事にでも巻き込まれたのか、と苦笑を漏らしながら手を差し伸べてくれる幼なじみ。誰よりも大切で、これからも一緒にいて欲しいと願う恋人。
「てめぇら、バカどもの色が混ざりあった……薄汚ぇ、銀色だッ!!!」
木刀を手にして壁へと書き綴る。自分の思いをすべてそこに乗せて。
「まだ……何も終わってなんかいなかった。こっからが……始まりだ」
定春の肉球スタンプが添えられ、銀時は決意する。
必ずやこの世界を戻すと。
「……たま、さっき金色に染まってないやつが二人って言ってたよな?」
「ええ。銀時様ともう一人、まだ銀色の光を宿している人がいます」
ここに来たたまは自分たち以外にも記憶をしっかり持っている人物がいると言った。今まで会った人達は皆銀時のことを忘れていたのに。
「それって誰のことなんだ?」
「彼は銀時様が良く知っていらっしゃる方です。ですが、今は少し問題がありまして──」
表情を曇らせたたまは俯く。持っているモップの柄をギュッと掴んで痛みをこらえるように。
「今は銀時様の記憶が一切ありません」
「は……?」
そう言ってたまは大通りの方へと目を向けた。つられるようにして銀時も通りの方へと目を向けると、そこには人影。
『ここにいたのか、たま』
「海……?」
「海様。お呼びしてすみません」
『いや、大丈夫だ。それより……』
壁に目を向けた海は眉間に皺を寄せ、銀時を睨む。
『お前、器物損壊罪という言葉を知っているか?』
通りにいたはずの海が一瞬にして銀時との距離を詰める。昼間と同じく、銀時の顔スレスレに刀を構えて。
「海様!お待ちください、これは……!」
「ど、どういう事だよ!完全に海はアイツの仲間じゃねぇか!」
「違うんです!海様は銀時様のことを忘れてしまっています。でも、坂田金時の事も知らないんです!」
「はっ!?」
銀時のことを忘れているが、金時のことも知らない。そんな中途半端な事があるのか。
「海様、刀を下ろしてください」
たまの必死な訴えに海は少し考えてから素直に刀を鞘へと戻す。不服そうな顔でたまを見つめてから、海は銀時を睨みつけた。
「海……?」
名前を呼んでも海は反応しない。それどころか銀時のことを睨みつけたままだ。まるで犯罪者を見ているかのように。
「海、俺の事本当に忘れたのかよ」
『お前のことなど知らない。たま、悪いことは言わない。こいつとは関わるな。昼間も大通りで問題を起こしていたやつだ。どうせろくでもないやつだろ』
「どうしてそう思うんですか?」
『どうしてって……』
「海様は人を見た目で判断しません。多少素行の悪い人であっても、海様はその人をたった数度会ったくらいで、相手のことをよく知らない状態では"ろくでもない"人間とは仰りません。どうして海様はこの人をろくでもない人と言うのですか?」
『そ、れは……』
たまの問いかけに海はしどろもどろになっていく。一歩、後ろへと下がった海は両手で頭を押さえてその場に座り込んだ。
「海!」
『……お、れは……』
「しっかりしろ!海!!」
倒れそうになった身体を慌てて抱き起こす。銀時の腕の中から逃げ出そうと藻掻くが、それ以上に頭痛が酷いらしく、すぐに大人しくなった。
『俺は……何を……?』
縋るような目で銀時を見上げたかと思うと、海はゆっくりと目を閉じて気絶してしまった。
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