第194幕
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外に出れば、坂田金時は道行く人に声をかけられている。それはまるで町民たちに愛されている海のよう。
「海は……海はどこだ!?もしかして海も俺の事を忘れてんのか!?」
一年ぶりに戻ってきてからまだ海とは会っていない。新八と神楽、そして町中の人間たちが揃いも揃って銀時のことを忘れているのだ。もしかしたら海も自分のことを忘れてしまっているのではないか。そんな心配が一気に押し寄せる。
「海、」
今すぐ会いたい。でも、海も自分のことを忘れていたらもう絶望しかない。
坂田金時が銀時の立場に成り代わっているというのであれば……。
「ふっざけんな!!海は俺のだ!!てめぇのじゃねぇ!」
銀時との記憶が無いということはそういうことだ。海の恋人は坂田金時ということになり、海の隣に自分の姿はない。
「やめろ……それだけは……!」
口の端から垂れる血を拭い、銀時は倒れている金時を介抱している新八たちへと目を向ける。
経った一年。その間に一体何があったんだ。聞きたいことは沢山あるのに、誰もその答えを教えてくれない。知っている街並みなのに、知っている人達なのに、誰が自分の存在を認めてくれない。
怒りよりも切なさや悲しさが勝って、もう何も言えなかった。
『おい。そこで何してるんだ』
「え……」
「海!聞いてヨ!金ちゃんがアイツに……!」
坂田金時が倒れている側へと黒服の男が歩み寄る。その男の顔を見上げると、それは紛れもなく海だった。
「あっ……」
海、と呼びかけて銀時は口を噤んだ。海は心配げな顔で坂田金時のそばに寄ってしゃがんだ。左右から新八と神楽から事情聞き、深く頷く。
『事情はわかった。そっちの男がこいつを昏倒させたんだな?』
「そうなんです!だから捕まえてください!」
新八は怒鳴りながら銀時を指差す。
『……それより、金時を医者に連れてけ。頭を打ってるなら診てもらった方がいいだろ』
「なら海も一緒に行こうヨ!」
『俺はそっちの男を何とかしないとだろ?金時のことはお前らに任せる。新八たちがついてるなら安心だし』
金時のこと頼む。と海は一言告げると、新八と神楽は渋々といった風に坂田金時を引きずって病院へと向かった。
残ったのは海と銀時だけ。
「あっ……えっ……」
ため息をついた海が銀時へと目を向ける。その目はしっかりと銀時を捉えていたが、何も映してはいなかった。
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