第193幕
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朔夜を連れて見回りを再開したのだが、ものの数分でまた海の足は止まってしまった。
「あけましておめでとう、海くん。朔夜くん」
『おめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします』
「あらあら、お世話してもらったのは私らの方よ」
朔夜の次は町民たちによって足が止まる。これはいつもの事なのだが、今日だけはスムーズに見回りを終わらせたいと思っていただけに、海の笑顔は固くなってしまっていた。
「おい、何やってんだよ」
そんな時、若い男性の声が響き渡る。声色からして不機嫌なのは確かだ。
「なんだい、博信!あんたもこっちに来て挨拶しな!」
町民たちの輪から外れたのは八百屋のおばさん。少し離れたところに立っている男性はこちらを睨むように見ていた。
「別に知り合いでもなんでもねぇだろ」
「何言ってんだい!あの子はいつも私らの為に頑張って仕事してるんだよ。あんただって何度か世話になってるだろう!」
「はぁ?だからなんだよ。それが仕事なんだから当たり前だろうが」
本人らはこそこそと話しているつもりなんだろうが、海たちには丸聞こえである。他の人たちもおばさんの方をちらりと見て微妙な笑みを浮かべていた。
「博信くん、実家に帰ってたんだねぇ」
「また八百屋のおばさんにたかりにきたんじゃないか?いつもの事だろう」
どうやらあの男性は八百屋のおばさんの息子さんらしい。そして、彼の素行はあまり良いものではなく、問題を起こしては実家に帰ってきておばさんに泣きつくということを繰り返しているとのこと。
警察に何度も世話になっているということは、犯罪に巻き込まれているのかそれとも自らその手を染めているのか。
「博信!いい加減にしなさい!」
普段は温厚なおばさんが辺りに響き渡るほどの怒号を発した。
「うっせぇな!俺だって探してんだよ!お前に言われる筋合いはねぇ!!」
怒りに打ち震える男性はおもむろに右手を振り上げる。それはどっからどう見てもおばさんを殴ろうとしている姿。
「兄さん!」
『ここにいろ』
町民たちの輪から素早く抜けて、海はおばさんと男性の間へと割って入った。
「海くん!」
「あ!?なんだよてめぇは!」
ごめんね、ごめんね、と背後で謝り続けるおばさんに大丈夫だと声をかけたのだが、男性はそれが気に食わなかったらしく、海の胸ぐらを掴んで間近で怒鳴り始めた。
「てめぇふざけてんじゃねぇぞ!!」
『ふざけた事など一切してないが?』
彼に対しては何もしていない。むしろ彼の方がしでかそうとしていたのだ。
『(面倒だな)』
海の冷たい返しに男性は煽られたと勘違いし、ひたすら支離滅裂な文句を言い続けている。彼が話す度にふわりと酒の臭いして、海は思わず顔を顰めた。
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