忘れた頃にやってくる(土方ver)
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『なぁ、お母さんと一緒っていう教育番組知ってるか?』
「それがなんだ。遠回しに文句言ってもきかねぇからな」
『何も言ってないんだが』
風呂場の前で立ち尽くして五分ほど。土方に何度も部屋に戻っていいと言ったのだが、全く聞き入れて貰えずこうして立っていた。
見た目が変わってしまったから他の隊士たちと風呂に入るのはまずいと思って時間をずらした。今はもう日付が変わっていて屯所で起きている人間と言ったら海と土方……そしてトイレに頭を突っ込んで抜けられなくなった近藤くらいだ。
だから気にしなくてもいいと言ったのだが、何度言っても土方はその場から動こうとしない。
『俺に構ってたら書類が終わらないだろ』
「そんなもん明日に回せる。お前と違って何日も溜め込んでるわけじゃねぇからな」
『ちょっと待て。誰が書類を溜めてるって?それは総悟に言え。アイツが処理すんの忘れてたやつがこっちに回ってきてんだよ』
自分の分はきちんと期日までには終わらせてある。それなのにギリギリの物が出てきているのは、横から別の物を入れられているからだ。
「分かっててやってんだから同罪だろ。そんなもん総悟に突き返せばいい」
『受け取らねぇんだよ』
それに受け取ったとしてもどうせ見やしない。結局、その書類は朔夜が困り顔で海のところに持ってくるのだ。それなら最初から海が手をつけた方が早い。
『いや、書類の話はどうでもいいんだよ。今は風呂のことだわ』
「早く行けって言ってるだろうが」
『俺は入るけど……お前はちゃんと部屋に戻れよ?』
「少ししたら戻る」
今すぐ戻れと言いたかったが、タバコを取り出して吹かしているのを見ていたらどうでも良くなった。
『タバコくらい部屋で吸えよ。別に気にしないのに』
海が土方の部屋に居座るようになってから土方は一度もタバコを吸っていない。いつも部屋の中を煙まみれにしているようなやつだ。そんな奴が一日中吸っていないとなると別の意味で心配になる。大丈夫なのかと声をかけると、やはり少しイラついた表情で土方は頷いていた。
自分が部屋に居るから我慢している。なんだか嬉しいような申し訳ないような気分だった。
『さて。考え事はあとにして早く洗うか』
どうせ彼は自分が出てくるまであそこで待っているつもりだろう。この時間だから誰も来ないはずなのに土方は海を心配してくれている。
ならば風呂を早く済ませて土方を安心させた方がいい。
『にしても……うーん』
改めて己の身体を鏡で上から下まで見る。自分の体なのに何故か申し訳なさが膨れ上がった。
『これ以上見ていいもんじゃないな。なんか女性に失礼な気がする』
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