忘れた頃にやってくる(土方ver)
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ここで待ってるから早く行ってこい」
『覗くなよ?』
「覗かねぇよ!!馬鹿なこと言ってないで早く済ませろ!」
海を厠の中へと押し込むと、土方はタバコを取りだして火をつけた。
やっと吸えたタバコはとても美味しく感じる。
海を部屋に入れたためタバコを吸うのを躊躇っていた。聞けばきっと吸ってもいいと言うだろうが何となく控え、飲み物を飲むことで誤魔化してタバコのことを考えないようにしていた。
「これからどうすんだよ」
海が女になっている事を隠し通すのは難しい。かといって隊士たちに事情を話すのも嫌だ。海は土方と恋仲であるということは皆に知られていることだが、それでも手を出そうとする奴がいるかもしれないのだ。
特に最近入った新入りの隊士などはそもそも海と土方の関係を知らない奴がいたりする。なるべく海から目を離さないように努めるつもりだが、四六時中一緒に居るのは無理だ。自分の目が届かない間に何かあった場合。
守り切れるかは分からない。
『土方?』
ガリッとタバコを噛んだ瞬間、海が厠から出てきた。
「済んだのか?」
『一応。これ着物だとめんどくさいな』
「ズボンの方が楽か?」
『だな』
モゾモゾと着物を整えている海に後ろを向くように言って、ズレてしまった帯や裾を直す。
「これで大丈夫だろ」
『ん、ありがと』
「用が済んだなら部屋に戻るぞ」
こくりと頷く海の手を引いて自室へと戻る途中、ばったりと原田と鉄之助に会ってしまった。
「あっ、副長!お疲れ様です!」
「ああ……お疲れさん」
「補佐もご一緒なんですね!」
鉄之助はいつもの様に土方と海に向けて挨拶をする。ぎこちなく返事をする土方に原田が苦笑いを浮かべながら爆弾を落とした。
「聞きましたよ副長。海が女になったって」
「あ?ああ!?誰から聞きやがった!」
「え?沖田隊長から聞きましたけど」
「あのクソガキッ!!まさか言いふらしてるわけじゃねぇだろうな!?」
「みんな知ってますよ?朝飯の時に言ってたの聞いたんで」
海と共に朝イチに食堂に行ったのでその後のことは何も知らない。海を一人にしないようにと部屋にこもっていたことで総悟がそんな事をしていたなんて全く知らなかった。
「総悟は今どこにいるんだ」
「沖田隊長ならさっき見回りに行きましたよ。探してきますか?」
「いやいい……帰ってきたら俺の部屋に来るように伝えてくれ」
「はい」
総悟に対して膨れ上がる怒りを我慢しつつ、土方はそっと後ろへと目を向ける。総悟が隊士らに話したと聞いたとき後ろから隊服を掴まれた。背後では不安そうに海が土方を見上げている。
『大丈夫、なのか?』
「心配すんな」
「あの……副長」
「今度はなんだ」
「海の……補佐のその服派手すぎませんか?」
「あ?これしか無かったんだよ。つか、お前さっきからやたら海に対して馴れ馴れしくねぇか?」
補佐、と言い直してはいるが、原田は確かに海を名前呼びしている。前までは平隊士だったが、今では海は副長補佐の身分。いくら隊長格の原田でも海は上司に当たるはずだ。それになんだか親しげに呼んでいるように聞こえ、胸がチリつく。
「あっ、すいません。まだ部下だった時の名残が抜けきってなくて」
「部下だ?」
「補佐はうちの隊の人間だったんで。って、副長忘れてたんすか?」
「……十番隊の?」
「ええ」
完全に忘れてた。確かに海は補佐になる前は十番隊の隊士だった。なんならそこに入れたのは土方自身だ。総悟の下では使いっ走りにされそうだし、三番隊では海のやることが無い。ほかの隊でも問題があったからと言って十番隊を指名した。
「悪い、忘れてた」
ははは、と笑う原田に気まずい顔で謝る。話を分かっていない鉄之助だけがアワアワとしながら土方と原田の顔を交互に見ていた。
.