忘れた頃にやってくる (銀時ver)
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「犯人見つかりましたよ」
『今すぐ連れてこい』
「屯所で取り押さえてるのでそれは無理ですぜ」
『いいから今すぐ連れてこい』
「海、ちょっと落ち着こうか。そう思う気持ちは分かるけど、今は落ち着こ?ね?」
座っている総悟に腕を組みながら海は何度も連れてこいと迫る。こんな目に合わせた奴をただ処罰するだけでは足りない。同じ痛みを味あわせてからでないと納得がいかなかった。
「そんな怒ることですか?女にされたのは確かに困りやすけど」
「今この子色々と難しいところだから。煽るようなこと言わないでくれる?」
「海さんはいつも難しいじゃないですか。合わせるこっちの身にもなってくだせぇ」
『悪かったな、難しくて』
「だーっ!お前らなんなの!?なんでそんなキレてんの!?」
『キレてねぇよ。総悟が連れてこないのが悪い』
「それは無理ですって言ってるじゃないですか。その代わりとはなんですが」
ことん、と総悟は机の上に何かを置いた。皆でそれを覗き込むように見る。
「なんですかこれ」
「男が持ってたものです。多分、解毒剤かと」
「ならこれで海元に戻れるアルか!?」
「さあ?本当に解毒剤かは使ってみないことにはわからねぇ」
机の上に置かれた手のひらサイズの瓶の中には水がたっぷりと入っている。それが解毒剤なのか、はたまたウイルスの入った水なのかは分からない。前者であれば海の性別は元に戻るが、後者であればそのままだ。
「どうするよこれ」
『使ってみるしかないだろ』
「これ飲むの?それとも掛けるの?」
「確か掛けられたんですよね?」
『ああ……』
「なら掛けてみるか」
瓶を持って海と銀時は庭へと出る。キュポンっと蓋が開けられ、銀時は瓶を海の頭へと傾ける。
「いいんだな?」
『やってみるしかないだろ』
「そりゃそうだけどよ」
『治らなかったら治らなかったでまた考える』
「その……治らなかったら……」
『なんだよ』
「いや、なんでもない」
首を横に振って銀時は言葉を飲み込んだ。中途半端なところでなんでもないと言われれば気になるわけで、その先を聞こうと口を開いたとき水を頭から掛けられた。
「……どうよ」
『何も変わらない……か?』
変わった時もすぐに変化があった訳ではなかった。変わった瞬間が何時だったのかは分からないが、少なくとも数時間は掛かっていたはずだ。
『時間を置くしかないな』
「マジかよ」
『それよりさっき何言おうとしてたんだよ』
「だからなんでもないって言ったろうが」
『変に途切れられても気になるだろ』
だから何を言おうとしたのか言え。そう言うと、銀時は口元を手で押さえながらモゴモゴと小さく呟いた。
「その……治らなかったら海のことを嫁にしようかと」
『は……は?』
「女になってるなら普通に結婚できんだろ。それに……子供とか……」
『お前、未来予想図描きすぎじゃないか?』
「悪いかよ!!それもいいなと思っちゃったんだからしょうがねぇだろ!」
顔を真っ赤に染めながら吠える銀時に思わず笑いが込上げる。
「何笑ってんだよ!」
『そんなバカ真面目に考えてるから……いや、お前……』
「バカですみませんね!!」
『ふっは……ほんとバカだわ』
「バカバカ言ってんじゃねぇよ!ったく、心配して損した」
拗ねてそっぽ向く銀時に一頻り笑い、落ち着いた頃に悪かったと一言。
『ちゃんと面倒見るつもりだったのかよ』
「当たり前だろ。海が男でも女だとしても俺のモンですー。誰にも渡すわけないでしょうが」
『はいはい。独占欲強い旦那で困るわ』
「うるせ……って、今……」
『そう言ったんだからちゃんと最後まで愛してくれよ?旦那様』
「は……あ、え」
ふにゃりと笑いかけると、銀時はぶわわっと首まで赤くしてその場に蹲る。その姿にまたケラケラ笑っていると、身体からモヤが出てきた。
『銀』
「なんだよ……今度は何……!」
『解毒剤で合ってたみたいだな』
モヤは全身を包み込む。煙が晴れた頃には海は元通りの姿に戻っていた。
『治ったか』
「海、ちょっとこっちおいで」
『うん?』
手招きされて銀時の側へ寄るとガバッと抱きしめられる。何事かと驚いていると、銀時は盛大に息を吐いた。
「ああ、やっぱりこっちの方が安心するわ」
『なんだよ。女の姿じゃ不満ってことか』
「違う。女の海は可愛かったけど、可愛すぎるから不安なんだよ。あんな華奢な身体じゃ何かあったときどうしようもねぇだろ」
『まぁ……体力が一気に落ちたからな』
「何かあっても守るけど。でもやっぱりこっちの方がいい」
『そうですか。元に戻ったんだからいいだろ』
「ん、ねぇ海。もう少しこのままで」
ぎゅうっと強く抱きしめられるのがなんだか久しぶりに感じる。自分も銀時の背中へと手を回して抱きしめると、銀時は嬉しそうに笑った。
「好きだわ」
『何がだよ』
「海が」
『……あっそ』
.