忘れた頃にやって来る
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「す、すみません……隊服の在庫がなくて……」
「無いってことはないだろ」
「無いというか……副長が言ったサイズの隊服が無いんですよ」
昼頃になって山崎は副長室の戸を叩いた。ようやくこの着物を脱げると思っていたが、どうやらまだこの服からは逃れられないみたいだ。
「作れねぇのかよ」
「急には無理ですね……朔夜くんの隊服を作ってもらった時も時間かかりましたし」
言われてみればそうだった。朔夜は真選組の中で一番背が低く小柄だ。まだ百五十を満たない身長のせいで隊服を着させるのは大変だった。自分が朔夜の隊服を作ってもらう為に上に頼んだのをすっかり忘れていた。
「てか、副長。なんで急にそのサイズの隊服が必要なんですか?」
「あ?気にすんな。ちょっと必要になっただけだ」
「もしかして新人隊士が入るんですか!?」
「そうじゃねぇ」
「じゃあなんでです?」
そりゃ急に必要だと言われたら気になる。
山崎は何度もしつこく土方に聞くがハッキリとした答えを貰えずすごすごと帰って行った。
『で?どうするんだ?』
「どうするもこうするもないだろ。隊服が無いんじゃそのままだ」
『キャバ嬢の服のままねぇ』
「キャバ嬢って、お前そう思いながら着てたの!?」
『キャバ嬢みたいだって言われたらそう思うだろ。近藤さんにも笑われたし』
昨日、土方の部屋に来た近藤は総悟と同じように海の事を嬢だと思いこんでいた。なんなら屯所から出ていくようにとも。
見られてしまったのであれば仕方ないと近藤に説明して納得してもらった。部屋を出ていく時に残していった一言はとても余計だったが。
──なんだ、キャバ嬢かと思っちまったよ!そんな派手な着物キャバクラでしか見ないからな!
やっぱりキャバ嬢が着る服なんじゃないか。ゲラゲラ笑う近藤を尻目に総悟と共に土方へと冷たい視線を送った。
「そんなに嫌なら後で別のもん買ってくる」
『嫌とは言ってねぇけど。まあ……そうしてもらえるなら』
「悪かったな、センスがなくて」
『うん。そこはなんとも言えない』
「素直に"うん"とか言ってんじゃねぇよ!!そこはフォローしろよ!!」
『センスに関しては何も言えない。でも、土方が頑張って選んでくれたんだろ?それに青地に金魚の絵って中々いい絵柄だと思う。色が抑え目だったら浴衣くらいにはなってたんじゃないか?』
「そ、それは……」
『褒めてはいない。全力で今フォローしてる』
そう言えば土方は口元をひくつかせながら海を睨む。
「お前、人の気も知らずに──」
「あ、ここに居たんですかい」
『どうした?』
スパーンッと戸を開けて顔を出したのは総悟。
「海さん、客が来てますぜ」
『客?』
「へい」
「そんなもん追い返せ。今は出られねぇだろ」
「もうすぐそこまで来てるんで無理ですね」
ちらりと総悟は廊下の先を見る。そちらの方から複数人の足音が聞こえ、海は咄嗟に仕切りの方へと逃げ込んだ。
「どーも。邪魔してマース」
「海!遊びに来たアル!」
「お、お邪魔してます……」
「なんでてめぇらが……」
「なに?遊びに来ちゃいけないの?」
「ここは遊びに来るような場所じゃねぇ!とっとと帰れ!」
「ふーん。なら海連れて帰るわ」
そう言って銀時は副長室へと足を踏み込む。
「……なにそれ」
銀時の視線にあるのは仕切り。その裏へと隠れている海に首を傾げる。
「どういうこと?これ」
(分岐)