忘れた頃にやって来る
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『ん……』
むくっと起きて時計を確認すると夜の九時過ぎ。屯所に帰ってきたのは五時頃。あれからずっと寝ていたのか。
書類は全て確認済みだからいいが、今日捕まえてきた浪士たちの取り調べはまだしていない。残党はきっとあいつらだけではないだろう。他の奴らの潜伏場所を聞き出そうと思っていたのに。
『……明日に回すしかないか』
これからやろうものなら近藤に止められる。攘夷浪士といえども相手は人間なのだからと。
『書類持っていくか。つか、腹減った』
ぐう、と鳴ったお腹を擦りながら書類を手にする。その時、ふと目に入った袖に違和感を感じた。
見回りから帰ってきた海は隊服のまま書類をやって仮眠した。だが、今着ている服は何故かサイズが大きく、海の手の甲半分程隠している。自分の上着であればこんな事にはならないのに。
『土方か?いや、それなら俺の上着は何処だ』
土方が海に上着を掛けていったのなら何となくわかる。海より身長があり、体格の大きい彼の服を着るとこうなるから。なら自分の隊服は?
『まぁいいか。書類ついでに上着も返せば』
土方が上着を置いていったのであれば海の上着が何処にあるのかも知っているかもしれない。まさか代わりに借りて行ったなんてアホなことはしないはず。
戸を開けて廊下へと出る。そこでまたもや違和感。
『いや、なんでズボンまで?』
明らかにサイズオーバーな裾。まるで親の服を借りた子供のようだ。
『なんだこれ。タチの悪いイタズラか?』
そんな暇があるなら仕事をしろと言いたい。こんな手の込んだイタズラがあってたまるか。
少しばかりイラッとしながら副長室へと進む。歩きづらいズボンの裾を捲り、上着の袖も捲って。
『土方、桜樹だ』
「ああ、入れ」
障子を開けて中へと踏み込むと、土方はペンを片手に書類と睨めっこ。その顔はイタズラをしたような奴の表情では無い。
『これ書類』
「ああ。助かった……って、お前なんて格好してやがる」
『知らねぇよ。起きたらこんな事になってた。大体、この上着お前のじゃねぇのかよ』
「俺のは掛けてあるが?」
土方が指さした方へと目を向けると、そこには確かに土方の上着。ならばこれは誰のだ。
『近藤さんにしては臭くねぇし……』
「おいちょっと待て。なんだ臭えって」
『さっき局長室の前通ったら臭かった。なんかまた変なことしてんだろ』
「それなら俺のところまで臭いがくるだろうが」
『お前は勘は鋭いけど嗅覚は鈍いから当てにならない』
「褒めてんのか貶してんのかどっちかにしねぇか?」
今だってなんか変な臭いがしてるというのにこの男は気づきもしない。土方のタバコとは違う異臭に顔を顰めつつ、海は土方の横に腰を下ろした。
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