忘れた頃にやって来る
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「それで?あとどれくらい残党がいると思ってんだ」
『軽く二、三十くらいは見積もっといた方がいいな』
今回捕まえた攘夷浪士たちは江戸を中心として地方にも枝を伸ばしているやつらだった。幕府を打ち滅ぼさんと緻密な計画を立てて実行しようとした間際、海たち真選組によって阻止された。
元々、妙な動きをしている奴らがいると会議で話が出ていた連中だったのだが、計画が露見したのは桂からの情報だ。
桂一派のところから数人脱走者がおり、そいつの後を追って行ったら仲間を集めて組織を形成していた。桂の生ぬるいやり方では気に入らなかった奴らの集まりは過激攘夷浪士となり、各地に点々と根を張り始めた。
それは正しく大樹のようだったと桂は言っていた。仲間が逃げたことに少しばかりショックを受けていたのか、自分が不甲斐ないばかりにこんなことになってしまったと小さく頭を下げていた桂を海は励まして、彼らを捕まえると約束した。
『(とはいえ、桂も攘夷志士なんだよな)』
かつての仲間とはいえ今は敵同士。そんな相手を励ますとはどういうことだ。やったのは自分だけど、なんだか嫌な気分だなぁとため息を漏らした。
「おい。あまり無理すんじゃねぇ」
『ん?』
「お前昨日寝てないだろ」
『寝た。一時間ほど』
「それは寝たに入らねぇんだよ」
『こんなんで寝てる暇なんてないだろ。書類も山積み、厳戒態勢中だから見回りも頻繁に行かなきゃなんねぇし』
「だから総悟たちを甘やかすなって言っただろうが。その分てめえが無理してたら意味がねぇんだよ」
『現場で動き回ってもらうために休ませてるだけだ。仕事があればこんなこと言ってらんねぇよ』
別にふざけているわけじゃない。これでも考えてやっている。
一番隊隊長とその部下といえどもまだ十代の子供。警察に身を置いていなければ、彼らはそこらの子供らと同じように遊んでいたはずだ。自分たちで決めた道だとしても、海は二人に無理はして欲しくない。
出来ることなら人斬りではなく別のところで頑張って欲しいと思っている。汚い仕事は大人に任せてくれればいいのにと。でも、そう簡単にいかないのがこの世の中だ。
『ほんとに……しょうもない世の中だわ』
「あ?なんか言ったか?」
『なんでもない。屯所にあるマヨネーズ全部捨てようかなって思ってただけ』
「お前何よからぬ事を考えてんの!?」
『うるせえ。黙って仕事しろ』
タバコを吸おうとしていた土方が驚いた顔でこちらを振り向く。仕事中にタバコを吸うなと言いながら、火のついた先を切り落とした。
「っぶねぇな!!」
『そんなもんスパスパ吸ってんじゃねぇよ。タバコ臭ぇ』
「これが無きゃやってらんねぇんだよ」
『ならタバコが要らねぇ身体にしてやろうか?』
「なんのお前はさっきから!俺なんかした!?そんなキレられるようなことしたか!?」
土方の喉元に刀の切っ先を突きつけながら睨むと、土方は吸い直そうとしていたタバコを持ったまま両手を高くあげた。
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