狐と猫 5
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『その後、俺は洞窟に戻ってたんだ』
「どういうこと?だって海は殴られて気を失ってたんだろ?」
『そうだけど……』
蛟に殴られたところまでは思い出した。その後に洞窟で目が覚めたのも。でも、その間の記憶は無い。そこだけがどうして思い出せなくて海は唸った。
「そりゃ思い出せねぇだろうよ。お前は操られてたんだから」
『操られてた?』
「お前は知らなかったかもしれねぇが、あの日お前を狙ってたゲス共がわんさかといたんだぜ?」
『ゲス共ってなんだよ』
「猫又の命を自分のものにしようとしてたヤツらがな」
「まさか!俺たちがいない間に!?」
「そいつが今ものうのうと生きてんのは食い意地のおかげってこった」
『食い意地ってところが嫌なんだが』
「その通りだろ。ここまで来てなければてめえは死んでた」
今の海ならば逃げることは出来たかもしれない。だが、子供の頃では呆気なく殺されていただろう。池に来て魚を取ろうとしていなければ。溺れて蛟に助けられていなければ、海はここには立っていなかった。
『助かった。ありがとう』
「礼を言われる筋合いはない。勝手に池に落ちてきたから追い出しただけだ」
『でもその後も守ってくれただろ?』
「よく覚えてねぇな」
『よく言う。思い出せって言ったのは人魚の方なのに』
「おい。その呼び方はやめろ」
『良いだろ。人魚みたいなんだから』
「晋助」
『え?』
「次、人魚なんて呼んだらてめぇの尾を引き抜く」
ふんっと鼻を鳴らして蛟は池の中へと沈んだ。
『素直じゃねぇなぁ。まぁ、うん。ありがとう、晋助』
聞こえているかはわからないが、もう一度礼を呟いて微笑む。その瞬間、ガシッと腰を掴まれた。
「海。なにアイツと良い雰囲気になってんの?」
『良い雰囲気ってなんだよ』
「良い雰囲気だったじゃん。久しぶりに会った彼氏みたいなさ」
『彼氏?』
「許しませんからね。あんな何処の馬の骨かわからねぇようなやつ」
『いや、馬じゃなくて蛟なんだが』
「許しませんからね!!」
クワッと目を見開いて怒り出す銀時と頭を抱えて重たいため息を漏らす十四郎。そんな二人の思いも知らずに海はただ首を傾げた。
『なんなんだよ』
「なんだよはこっちのセリフなの!いつのまにあんな奴と仲良くなってんの!?」
「他に妖怪が居たなんて聞いてない。それにお前を狙って山に奇襲掛けられていたなんてな。これは近藤さんに相談すべきだ」
「絶対アイツに会いに行こうとすんなよ!?絶対に!!」
「海、もう俺らから離れるな。何があるかわからねぇ」
『お前ら言ってることは同じなのに中身が全く違うだろ』
十四郎は海を心配して言ってくれるのに対して、銀時は蛟を目の敵のような態度。
蛟に会っただけだというのになんでこんなにも騒がしくなるのか。海はそっとため息をついた。
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