狐と猫 5
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
銀時と十四郎はすぐに帰るから洞窟から出るなと言っていた。だから大人しく待っているのだが、とてつもなく暇だ。
話し相手も居ないし遊べるものもない。ただゴロゴロと転がりながら銀時たちの帰りを待っているだけ。
『……そうだ!さかなとりにいこ!』
ガバッと起き上がって洞窟を抜け出す。入口のところで銀時たちが戻ってきているかをしっかりと確認してから、海は水場の方へと下った。
明日の分の魚を用意しておけば銀時が楽になるはず。どうせ今日も酒の匂いを漂わせて帰ってくる。そういう時の銀時はべろんべろんに酔っ払ってしまって何も出来ない。だから今日は自分で魚を取りに行こう。
いつもとってきてもらっているのも申し訳ないから。
そう思って海は水場を目指して歩く。洞窟から水場はそんなに離れていない。もし魚を取っている間に銀時たちが帰ってきてもすぐに戻れる距離だ。これなら心配されることも無いはず。
『なんびきとろうかな。いっぱいあったらいっぱい食べれるよね』
お腹いっぱい食べたら幸せだとわくわくしながら走る。
水場まで後ちょっと後ちょっとっと思いながら走ったが一向に水場が見えてこない。いつもならすぐに着くのに。
『あれ……どこだっけ』
魚を取りに走り続けたのはいいが、今度は帰り道まで分からなくなってしまった。洞窟から一直線に下に降りてきたから真っ直ぐ上に戻ればいい。そう思って来た道を戻ってみたが洞窟らしきものは見えなかった。
『うそ……おれまよった?』
行っても目的地につかず、戻っても洞窟に帰れない。そんな状況に段々と瞼が熱くなっていく。
『どうしよ……きつね、きつね!』
今は一人。どれだけ銀時を呼んでも来てくれない。
『うっ……きつね……』
心細さと暗闇に目が潤んできたころ、視界の端に小さな池が見えた。涙を着物の袖で拭いながらとぼとぼと池へと向かう。そこは木々に隠れるようにしてぽつんとあった。
『なにこれ』
池の縁に手と膝をついて水の中を覗き込む。見た目は小さな池だったが、ここにも魚が居る。数は少ないが明日のご飯の量には間に合う。これなら魚を得ることは出来そうだ。
そっと水の中へと手を入れて魚をとろうとしたが、海の手よりも魚の動きは早く中々取れない。
『うー……取れない』
片手でダメなら両手で。動き回っている魚へと必死に両手を伸ばす。もう少しで取れるというところで膝がズリッと滑った。
ドボンッと池の中へと頭から落ち、魚は海から逃げるように激しく泳ぐ。
『あっ……』
早く上がらないと。必死に手足をばたつかせてみたものの上がるどころか身体はどんどん下へと沈んでいく。
息が苦しくなってごぼりと口から大きい泡が出ていった。
『(このまましんじゃうのかな)』
身体は下へ下へと落ちていく。こんな場所では銀時たちにも見つからない。海が洞窟から居なくなったと心配させてしまう。これなら大人しく二人の帰りを待っていれば良かった。
『(ごめんなさい……きつね)』
薄れゆく意識の中で銀時に謝る。もう銀時たちに会えないんだと思ったら涙が出た。
.