狐と猫 5
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ざばっと水の中から顔を出すと、目の前には銀時が座り込んでいた。その後ろで十四郎も焦燥感たっぷりな顔で海を見下ろしている。
「海ッ!!」
『大丈夫……もう大丈夫だから』
「何が大丈夫だ!!テメェはやっぱここで──」
『銀時!』
また火を纏わせる銀時に向かって抱きついて二人して地面へと倒れ込む。
「は?あ!?海!?」
『思い出したわ。俺、子供の頃に蛟と会ってる』
「会ってる……え?なにに?え??てか、ちょ……」
顔を上げると何故か銀時は顔を真っ赤にしていた。だが、そんなことも気にせず海は当時のことを振り返る。
『あの時は確か狐も十四郎も呼び出されて居なかったときだ』
「あの海さん。思い出すのはいいけど、この体勢どうにかなりませんか?その……いくらこの状況でもそんな可愛いことされたら俺もう……」
『魚を追って池に落ちるなんて情けない話が何処にあるよ……』
「うん。なんか大体分かってきたけどね?その前に一旦俺の上から退こうか。じゃないと俺の立派なエクスカリバー出てきちゃうから。魚あげるからお願い」
そう。以前、二人がいない時にこっそりと海が魚を取りにいた時の話だ。
「こんな体勢で回想始まんの!?ねぇ!!これどう考えても騎乗──」
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
『ひま』
寝転びながら空を見上げてポツリと呟く。真っ暗になった空では何も楽しめない。いつも構ってくれる十四郎も銀時も今はそばにいなかった。
ちょっと前に見知らぬ人が来た。大きな声で笑うその男は十四郎と銀時に集会に出るようにと告げ、大きな手で海の頭を撫でたかと思うと、これまた大きな黒い翼を広げてどこかへと行ってしまった。
男がいたのはものの数分。なのに十四郎と銀時の機嫌を一瞬にして損なわせていた。
「俺行くの嫌なんだけど」
「仕方ないだろ。近藤さんがわざわざ出向いてまで言いに来たんだ。今日は何がなんでも出ろ」
「そう言っても……海はどうすんだよ。一人残していけっていうのか?」
「この山なら安全だ。洞窟から出なければな」
「何言ってんの?こんな可愛い子を一人にさせられるわけないでしょーが。あっという間よ?そこらへんのよく分かんねぇ妖怪だの人間だのに見つかったらあっという間に食われちまうだろうが」
「そうならねぇようにこの山を選んだ。ここは安全だ」
「そんなこと言って襲われたらどう責任とるんだよ」
いつものように喧嘩している二人を横目に海は銀時の尻尾の中へと潜り込む。どうせ二人の話を聞いていたってよく分からないのだ。それなら遊んでいた方がいい。
『ふわふわぁ』
ぎゅうと抱きしめるとふわふわの毛が海を覆う。九つある尻尾が海の全身を包み込んで擽るように動いた。
『くすぐったい!』
そうして遊んでいるうちに夜は更け、銀時と十四郎は海を置いて集会へといってしまった。
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