狐と猫 5
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「まさかと思ったが……お前
十四郎は暫し考えてからハッとした顔で妖怪を見る。今まで聞いたことの無い名前に海と銀時は小首傾げた。
「蛟?なんだそれ」
「水の中に住む妖怪だ。竜、または大蛇の一種とされている。他にも色々と伝承があるらしいが……海のように珍しいやつでな。ここ数百年は姿を見せていなかった。蛟の存在自体が怪しいという話もあったが……」
今目の前にいる。説明されている本人は十四郎や銀時に一切の興味を示さず、ただ海を眺めていた。
蛟の方は海の事を知っているようだが、海の方は全く覚えがない。この山に十四郎と銀時以外の妖怪が居ることに驚いたくらいなのだ。他に妖怪がいるというなら話し相手にでもと思ったが、これではそんな事を言っていられない。
「ったく、誰もいないって言うからここに決めたってのに。いつもこうだ」
「お前んとこの頭領変えた方がいいんじゃねえのか?あんなゴリラ」
「ゴリラじゃねぇ。バカにすんな」
「ゴリラだろ。それよりどうすんだよ。コイツ海のこと殺そうとしたんだぞ。あの低級どもと同じってことだろ。海の命を食い潰す為にここに来たんじゃねぇのかよ」
「いや、それは無いな」
「は?」
「蛟は水場しか移動できないはずだ。人型を取れても僅かな時間しか保てない。水がない場所では行動制限が掛かったはず」
「え。なに?お前妖怪ウォッ○でもしてんの?やけに詳しくない?」
「文献があんだよ。猫又のことを調べた時にたまたま見ただけだ」
「ああ、なるほど」
猫又も蛟も珍しい種類に入るらしく、人伝に聞いただけでは詳しいことは分からない。それ故に十四郎は頭領の所に出向いては海のことを調べあげた。その時に蛟のことも知ったのだというが……。
『よく覚えてるな。俺ならすぐ忘れそう』
「見た目がその……」
『見た目?』
「まさか……えっ、お前コレに惚れたの?」
「ンなわけあるか!!誰がこんな魚みてぇな奴に!」
"魚"と言われて蛟は十四郎をこれでもかと睨み、その視線に気づいた十四郎は誤魔化すように咳払いをする。
「その、もしもの場合を考えてただけだ」
『もしも?』
「お前が魚と見間違えて食う可能性だってあるだろ」
真顔でそんなことを言われて皆黙った。
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