狐と猫 5
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「お前らここで何してんだ」
『十四郎……』
「ずぶ濡れじゃねぇか。何やってんだお前は」
『これはその……』
訝しげにこちらを見る十四郎に説明しようとしたが、銀時の狐火が勢いを増したことにより話は遮られた。
『狐!お前もういい加減に──』
「海は絶対に渡さねぇ……!」
銀時の周りに漂う火の粉は木を燃やし、足元を枯らしていく。その様はいつぞやの火事と同じに見える。
『……っ』
「海、目を閉じてろ」
死ぬ間際に見えた光景がそこにあるような気がして咄嗟に顔を伏せた。そんな海の視界を塞ぐように十四郎の翼が海を覆う。
「おい、てめぇらは一体何やってるんだ。それにそこのお前。誰だ」
「いつからここは妖怪共の溜まり場になったんだ?そこにいる猫どころかこんなクソ狐まで」
「そりゃ悪かったな。この山には誰もいないと思っていたんだが」
「それはてめぇらの目が節穴だっただけじゃねぇか?」
池の妖怪はふんっと鼻で笑って十四郎と銀時を煽る。十四郎はそんな誘いに乗らずに冷静にしていたが、銀時はカチンときたのか狐火を飛ばして相手を威嚇した。
「二度と海に近づくんじゃねぇ。今度同じことしてみろ、その首と胴体が繋がってると思うなよ!」
「キャンキャンうるせぇな。見た目は妖狐でも中身はただの犬か?」
「今すぐ殺してやろうか!」
『狐、もういい加減にしろよ。そっちのお前も狐をからかうのはやめろ』
このままでは銀時が相手を殺しかねない。喧嘩くらいならまだしも、殺し合いとなると厄介だ。最上位の妖狐が他の妖怪を手にかけたとなれば問題になる。
『狐、俺は大丈夫だから』
「でもお前アイツに殺されかけてんだぞ!?」
銀時の言葉に十四郎も池の妖怪を睨む。
『死んでないんだからいいだろ。狐が助けてくれたんだから』
十四郎の翼の中から出て銀時の腕を掴む。何ともないから気にするなと繰り返してやっと狐火が落ち着いた。
「本当に大丈夫なんだな?」
『何ともない。助けてくれてありがとな』
「ん、」
しょげている頭に手を伸ばしてふわふわの頭をそっと撫でる。銀時のしっぽがぺたりと顔に張り付き、そこで互いにびしょ濡れなのを思い出した。
『乾かさないと風邪ひくな』
「海、こっちおいで」
腕を引かれて銀時の胸に飛び込むと、優しく抱きしめられる。何事かと銀時の顔を見上げた瞬間、周りに青い火が揺らめき出した。
『狐……!』
「大丈夫。乾かすだけだから」
その言葉通り銀時の火は濡れた服や髪を乾かして消えた。
『……便利だなそれ』
「結構疲れるけどね」
『それならなんでやったんだよ。普通に干せばよかったのに』
「それじゃ海が風邪ひくだろ?それにこれくらいなら大丈夫でーす」
にんまりと笑う銀時にため息を零しつつ、海は池にいる妖怪へと目を向ける。
面倒くさそうな表情を浮かべている彼はじっと海のことを見つめていた。
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