狐と猫4
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子育て?を初めてから一年。普通の子供とは違う海はすくすくと成長して以前と同じくらいにまで背が伸びた。
記憶も完全に戻ったのか、銀時のことも死んだ時のことも思い出している。
「海、ちょっと海。人の話は聞きなさいっての」
『聞いてるだろ。いつまでもお前にあれやこれやと世話を焼かれる筋合いは無い』
成長するにつれて海は銀時に対してよそよそしくなった。別に嫌われているというわけではなさそうだが、やたらと距離を置きたがる。少し前までは銀時の膝の上でご飯を食べていたのが、今では銀時の知らない間に食事を済ませていたりした。
もう海の面倒を全部見なくてもいいのは分かっている。でも、今までしていたことが突然なくなると頭が追いつかない。癖になってしまった魚の身ほぐしや、しっぽの毛並みの手入れなど。
『ついてくるなって言ってるだろ』
「こんな夜更けにどこ行くんだよ」
辺りは真っ暗。そんな中どこに行こうと言うのか。
この山は人間たちが入ってくることは無い。だが、その代わり野生の動物たちが多く生息している。銀時のように膨大な妖力を持ち尚且つ攻撃手段として使えるなら心配はいらない。
海は微々たる妖力しか貯められず、しかも何かに襲われたらやり返すだけの力を持っていない。烏天狗に身を守る方法を教えてもらっていたらしいが、それはあくまで人間とのやり取りのときだけ。
妖怪や野生の動物相手ではたちまちやられてしまうだろう。
「お前ここら辺イノシシが来てんの知ってるだろうが」
『だからなんだよ。出くわしたら蹴り飛ばせばいい』
「イノシシをそこらの人間と一緒にしてんじゃねぇよ。蹴り飛ばしたくらいで逃げるわけないだろ」
『そもそも会わなきゃいい話だろ。見つけたらこちらが先に逃げればいい』
そう言って海は面倒くさそうにため息を漏らす。
「逃げ足早いのは知ってるけど、それでもダメだ。日が昇ってから遊びに行けばいいじゃん」
『別に遊びに行くわけじゃない』
「じゃあ何しに行くんだよ」
そこで海は黙り込む。いつもここで話が途切れてしまうのだ。
一人でフラフラとどこに行っているのかを聞くと海は大抵口を閉ざす。しつこく聞こうものならキレて帰ってこないことが起きるほどに。何かを隠しているのは分かっているのだが、そこまで深く踏み込むことも出来ない。
「海」
ふんっと顔を逸らしてこちらを見ようとしない海に銀時は困ったように頭をガシガシとかいた。
「危ないのは分かってんだろ?」
『別にそんなでもない』
「そんなに行きたいの?」
『………ん』
「なら一緒について行く」
『は?』
「どうしても行きたいっていうなら一緒についてく」
きょとんとした顔で海は銀時を見つめる。どうやら銀時がついてくるという考えはなかったらしい。
『なんで狐が?』
「なんでってそりゃ心配だからに決まってるでしょうが。最近親離れ出来るようになったやつが一人で真夜中に山ん中フラフラしてるなんて危なっかしくて見てられねぇよ」
"親離れ"の単語に海はムッとしながら顔を赤くした。小さい頃からの記憶は持ったままなので、銀時がずっと海を世話していたことは知っている。助けた小狐に世話をされていたなんて恥ずかしいかもしれないが事実だ。
『勝手にしろ』
「はいはい。勝手にしますよ」
ぷいっと顔を背けて歩き出す海の後ろをついていく。
「(こいつ何くっつけてんだよ)」
先程から感じていた違和感。今まで無かったのに最近感じるようになった海の強情さ。そして銀時や烏天狗以外の妖怪の匂い。
自分の知らないところで海はほかの妖怪に会っている。その事に苛立ちを感じ、近くにあった木へと怒りをぶつけた。
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