狐と猫4
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「やっと生まれたか」
ばさりと黒い翼をはためかせながら降りてきた烏天狗に銀時は目を細める。
「なに?もう帰ってきたのかよ」
「あんな奴らと飲む酒なんざ美味くもねぇ」
その意見には銀時も賛成だ。一度だけ誘われたから行ったことがあるが、嫌な思い出しか残っていない。口を開けば猫又がどうのこうのと言われ、気分がとても悪かった。
"とうしろう"
「……なんだその身体は」
銀時に抱えられている子猫を見て烏天狗は顔をしかめる。
「見つけたときからこのまんまだけど?」
「骨が足りないとこうなるのか」
「この状態じゃ人型にもなれないだろ」
猫のままでは海に危険が及ぶ。普通の猫とは違ってしっぽが二股に分かれているのだ。この山にいる限りは人間の目に触れることは無い。だが、その代わりに妖怪に見つかる可能性がある。
小物の妖怪であれば捻り潰せるが、銀時や烏天狗並の揚力を持つようなやつが現れたらめんどくさいことになる。
「妖力はあるはずだが?」
「え、こんなんでも人型になれんの?」
「以前のような姿は無理でも、子供くらいの見た目にはなれるだろう」
「海、人になれる?」
膝の上でゴロゴロしている海に声をかけて持ち上げる。身体を縮こまらせてぐっと力を込めているのを心配げに見つめた。
暫くしてから海はくてっと脱力する。子猫の姿から人間の子供の姿にはなった。だが、黒い耳と二股のしっぽは出たままだ。
「これ余計に目立つんじゃねぇの?」
「おまえがひとになれっていったんだろ」
「今のコイツじゃそれが限度だ。その状態ならまだ猫の姿の方が身を隠しやすいだろ」
「いや、まあそうだけども」
猫の姿に戻るのにも力を使うため、今はこの状態を維持するしかない。生まれたばかりの海に何度も変身させるのは酷というもの。ぐったりとしている海を腕に抱いて銀時は己の住処へと戻ろうと立ち上がる。
「おい。そいつを何処に連れていくつもりだ」
「どこって俺の家」
この山にある廃神社をねぐらにしていることを烏天狗は知っている。そこに海を連れていくと言えば、烏天狗は不機嫌そうな顔で銀時に一歩近づいた。
「そんなところで海を育てられるわけないだろうが」
「そんな所って……アンタに預けた方がもっと危ないだろ。他の妖怪たちとつるんでるし、そもそも家持ってねぇし」
木の上で寝ているようなやつに海は任せられない。それに烏天狗と一緒にいれば他の妖怪たちに合うリスクも高まる。その点、銀時はこうなることを予想して妖怪たちとの接点を持たないようにしてきた。
「俺のところに居た方が安全だと思うけど?それに……」
「なんだ」
「海本人は離れたくないってよ。俺のしっぽから」
変身して疲れた海はいつの間にか眠っていた。小さな手にはがっしりと銀時のしっぽを掴んで。
苛立ちを隠しきれない烏天狗は銀時のことを強く睨んでその場を飛び立った。もし海に何かあればすぐさま連れていくと残して。
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