狐と猫4
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつものように海の骨のところに来ていた銀時の前にそれはいた。
土の上にゴロゴロと転がっている黒い子猫。立ち上がろうと足に力を入れているようだが、上手くいかずにパタリと倒れる。
「海?」
銀時の呼び掛けに子猫は反応して頭をあげる。土だらけの顔で銀時をじっと見つめて鳴いた。
"だれだ?"
「俺は……お前に助けてもらった狐だよ」
小首傾げる子猫を抱き上げて土を払う。
"きつね?"
「ああ。覚えてないのか?」
"きつね……"
呟くだけでそれ以上のことは言わない。生まれ変わったばかりで記憶が混濁しているのだろう。それに海の知っている狐の姿と今の銀時では全く違うから海が分からないのも仕方ない。
"ここはどこ"
「海が住んでた場所から離れた山のとこだよ。あそこはもう住めなくなったから」
烏天狗が怒りに任せて山を崩してしまったから住めなくなった。元々あの山に居たのは烏天狗と銀時だけだったから良かったものの、他の妖怪が住処としていたら烏天狗はその責任を問われていただろう。
九尾となった銀時は妖怪たちの集会に顔を出すようになった。そこでは烏天狗が大事にしている猫又の話で持ち切り。猫又が死んだことで烏天狗が天候を操ったという話が出ては、その猫又が気になるといって他の妖怪どもが海を探そうと躍起になっていた。
中には海を食い尽くせば命が増やせるのではないかと言う輩もいた。
そんなやつらから海を守るため、元いた場所から遠く離れた山へと移り住んだ。妖怪たちの居ない場所を探すのは大変だったが、なんとか見つかった数少ない山。人間たちもこの山には登ることはなく静かに過ごせる。
"とうしろうは?"
「烏天狗なら今はいねぇよ。なんかさっき呼ばれてどっか行った」
どうせまた酒付き合いだろう。それしかないのだから。
"そうか。おまえはなんでここにいるんだ?"
小さな手でポンポンと銀時の手を叩く。
「んー?それは日課だから?いつ海が生まれ変わるかなーって毎日ここに見に来てたから」
"まいにち?"
「そ。海が死んでから三十年経ってるんだよ」
そう言うと海は愕然とした様子で銀時を見上げる。
"さんじゅう……ねん?"
「おう」
"かすみは……?"
「海が死んだ翌年に」
亡くなった。病気や怪我ではなく寿命で。そう伝えると、海は俯いて鳴いた。
.