狐と猫 3
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「なんだ……これは……」
"だから言っただろう!あの子を早くこの村からつれだせと!"
足元で騒ぐ猫に目もくれず十四郎は村を眺める。
村の中心には久しぶりの雨に喜ぶ村民たちで溢れている。
その脇には真っ黒になった家。
「海は……アイツはどうした!?」
猫は十四郎の問いに答えず俯く。
海が住んでいた家は焼き払われて炭と化している。その横で喜んでいる村民。口々に雨乞いの儀が上手くいったと言っているのが聞こえ、目の前が真っ暗になっていくのを感じた。
「まさか……」
背中の翼を広げて焼け落ちてしまった家へと飛ぶ。昼には何ともなかった家が今では黒一色。天井は焼け崩れているし壁も残っていない。もはやそこに家があったのかも分からないほどに焼き付くされていた。
「海……!」
声をかけたところで返事が返ってくることはない。それは家に近づいた時点でわかっていた。雨の匂いに混じって肉の焼けた臭いがしたから。
「早く……ここから連れて行っていれば……」
海が寝ていた場所へと歩を進める。真っ黒でもう何も分からない状態だが、そこには確かに海がいた。
燃えカスの中にある白いもの。寝ている状態で焼かれたのか、横になったままで死んでいた。
「……海」
残っている骨を手に取り、それを持っていた巾着袋へと丁寧に入れる。全ての骨を持ち帰ることは出来ないが、必要最低限の量を袋に入れた。
「……そんなに水が欲しいんだったらくれてやるよ。コイツが苦しんだ分、てめぇらもそれを味わえ」
巾着袋を大事に抱えて十四郎は天へと手を掲げる。本来は許されていないこと。だが、今は理やらなんやらを考えている余裕は無い。
今、十四郎に出来ることは村民に対する復讐。
優しかった雨粒は途端に激しい豪雨へと変わり、村の家を叩きつける。外にいた人間たちはみな蜘蛛の子を散らしたかのように家へと帰っていったが、十四郎はそんな彼らを逃がすはずがなかった。
その日、海がいた村は近くの山の土砂崩れによって壊滅した。誰一人として生存者は見つからず、全ての村民が土砂によって埋められた。
暫くしてその区域は異臭が放つようになり、その場に立ち入る人は誰一人としていなくなった。
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