狐と猫 3
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狐と十四郎が帰ったあとの真夜中。海は眠れずに家の天井を眺めていた。
十四郎に妖力を分けてもらったのに体調は悪化していく。一時は下がったと思っていた熱がまた上がり、吐き気と頭痛が酷い。そのせいで眠れず、こうしてぼうっと天井を見つめることしか出来ない。
──この村を出ろ。
十四郎に言われたことを思い出す。雨乞いの儀の贄にされるかもしれないというのに恐れや焦りなどは全く感じなかった。またこれか、という諦めだけ。
村や町を転々としている理由はこれにある。余所者や旅人という存在は人身御供にされやすい。村を守る神に供える人間が神聖な者ではなくてはならないという考えを持つ人間も少なからずはいる。だが、危機に瀕している人間たちは見境がなくなり、今まで従ってきたルールを破る事を厭わない。
この村の前に住んでいたところはそうだった。
本来は村の娘を生き埋めにすることで厄災から村を守ろうとした。だが、飢饉に襲われた村はまともな生贄を出すことが出来なかった。
そこで目をつけたのが余所者。余所者であれば居なくなったとしても誰も困らない。住処を転々としている人間は身寄りなんて居ないから、誰かに追求されることもないのだ。
生贄として殺すのに打って付けの存在。
そんなことが村で計画されていたことなんて知らなかった海はいつもの様に過ごしていた。村が飢饉に襲われていたことは知っていたが、それは自業自得だと思って。
畑があるのに作物を育てない。川があるのに魚を取らない。村民は流れてくる商人から食物を買って生きていた。お金は湯水の如く使い、無駄な浪費をしては喜んで他人に話す。彼らは炭鉱というものに支えられていた。
詳しいことは分からないが、外から来た人間たちが村民に施しを与えて帰るのはよく見ていた。喜んで受け取っていた村民に十四郎は怠けていると文句を言っていたのは今でも覚えている。
いつからかその施しがパタリと無くなった。村の近くにあった炭鉱から何も取れなくなったからだ。
用済みとなった村には誰も来なくなり、流れていた商人も来なくなった。
誰かがそれを厄災だと言った。お供えをすればまた鉱山から物が取れると。また国からの施しが受けられると誰かが言った。
そのあとのことはよく覚えていない。気づいた時には十四郎の元にいた。家に戻ると十四郎の手を振り払おうとしたが、猫の姿では何も出来なかった。
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