狐と猫 3
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『おい、どうしたんだ?』
布団の中にいた狐はひたすら海の手を引っ掻き続けている。爪を立てていないので痛みは無いが、さわさわと毛が当たって擽ったい。
「ふん」
『なんだよ』
気に食わないと言いたげな顔で十四郎は狐を睨む。
「噛んだ事の詫びが言いたいんだろ。お前に怒られるのが怖くてわざわざ狐に身を戻してな」
『狐に身を戻してって……』
ふと、先程居た子供の姿がないことに気づいた。体調の悪い海をガタガタと揺さぶりまくっていたあの子供はどこへ行ったのか。
『さっきの子供は何処の子だ』
「そこにいるだろ」
『そこって……』
十四郎が指さしたのは海の布団。海の手に擦り寄っている白狐に。
『まさかこいつ妖狐なのか?』
「ああ。まだ生まれたばかりだがな」
布団を引っペ返して狐の姿を見る。そこら辺の山にいる狐と何ら変わらない姿。強いて言えばこの辺で白い狐を見るのは珍しいことくらいだ。
『妖狐なんて初めて見た。でもなんでこんな所に』
「さあな。別のところで生まれて裏の山に住み着くようになったのか、それとも元々あの山にいたのかは知らねぇ」
引っ掻いていた手を止め、狐はおずおずと海を見上げる。その目は微かに潤んでいて、ごめんなさいと謝っているように見えた。
『謝ることはねぇよ。むしろごめんな。あの罠は元々俺たちに掛けられてたもんだったんだ。そこにお前が掛かったから。痛い思いさせたな』
優しく頭を撫でてやれば、狐は海に寄り添うように身を寄せた。
「海、さっきも言ったがこの村は早めに出ろ。行く先が決まってないって言うなら山に来い。そうすれば護れる」
『突然いなくなれば向こうは躍起になって探し出すだろ。それにそんなこと考えてる連中だ、もしかしたら』
自分が逃げ出したらどんな事が起こるか想像出来る。彼らは海の代わりを見つけて生贄とするだろう。この村には海と霞以外にも黒猫が数匹いる。その子らは人間の目につかないようにひっそりと暮らしているが、いつかは必ず見つかってしまう。
そうなったとき、確実に雨乞いの儀式として供物にされる。
それは何とかして避けたい。数回しかあの子たちにあったことないが、みな霞のことを助けてくれた。生きていくだけで精一杯なはずなのに。
『雨乞いなんて意味は無い。それを彼らに教えるしかないだろ』
海の話を聞いてくれるとは思わない。余所者の言葉なんて信じられないだろう。それでも彼らを納得させねばならない。これ以上、罪のない猫たちが悲惨な目にあわないために。
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