風邪の日(銀時ver)
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つきりとした痛みが喉を襲う。朝起きた時には無かった痛みにさーっと血の気が引いていくのを感じた。この世に生まれ落ちてから二十年ちょい。この痛みの理由は嫌という程知っているし、この段階がどういう状態なのかも知っている。
『まずい……』
筆を持っていた手を止めて部屋を出る。すれ違った隊士達に声をかけられるも、手を上げて返事をするのみ。今は彼らに構っている余裕はない。
『誰かいるか?薬をいくつかもらいたいんだが』
飛び込んだのは真選組屯所の医務室。そこに駐在している医者に症状を簡潔に伝えた。薬棚を漁ってあれやこれやと薬を用意している時間がもどかしい。
早く薬を飲んで今の状態を抑えなくてはならないのに。
「これでいいですか?」
『あぁ、悪いな』
「いえ。でも、これって……」
『深いことは聞くな。絶対にこの事は他言無用だ。いいな?』
「は、はい……」
無意識に睨みつけていたのか、医者は怯えた顔で海の顔を見る。やってしまった。と少し罪悪感が残るが致し方ない。一応、一言謝ってから医務室を出た。
そしてすぐさま自室へと戻り、渡された薬を口の中へ放り込んで水で流し込む。
本当はこのまま寝た方が治りが早くなるのだろうけど、机の上に溜まっている書類を考えるとそれは出来ない。
副長補佐という役職についてからというものの、仕事の量が格段に増えた。それこそ不眠不休を強いられるくらいに。書類は前までの倍に増えているし、実働数もかなり増えている。副長の土方が出るのであれば必然的に自分も出なくてはならない。
そんな忙しい毎日に明け暮れていた矢先のこれだ。きっと疲れから来たものなのだろう。こんなときに病気になんてなっていられないというのに。
『くそ……酷くなる前に薬で抑えねぇと』
まだ喉痛みだけで済んでいるからいいだろう。これならばまだ初期段階。ここから頭痛吐き気、熱、咳の症状へと段階が上がる。何が悔しいって、目に見える症状の咳が一番最後に来るのだ。
ある意味助かるというか辛いというか。咳の段階までいかなければ誰にもバレることなく風邪を治せる。周りに迷惑をかけることなく済ませられるのだ。
『今回は早く気づいたからそこまで酷くならないだろ』
いつもだったらこれより酷い症状が出てから風邪だと気づく。次の日には熱が上がって動けなくなるのだ。それに比べたらまだ良い方。
痛む喉をお茶で潤しながら再び筆を取る。この書類が終わる頃には総悟たちが帰ってくるはず。その入れ替わりでの海の見回りが入っている。だから急いで目の前の書類を処理しなければ。
この時、この風邪があんなにも酷くなるとは思わなかった。
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