狐と猫 2
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海が自力で歩けるようになった時、もう既に親はいなかった。
周りには自分よりも大きい者たち。彼らの足元をうろうろと歩き回っては邪魔だと何度も蹴られた。
子猫だった海の身体は簡単に宙に浮いて地面へと叩きつけられる。そんなことを繰り返しやられていれば、骨は折れ内臓は傷ついていく。
痛くて怖い。逃げ出したくても身体に力が入らないし、そもそも何処に逃げればいいのか分からなかった。
もうこのまま眠ってしまおう。そうしたら何も感じなくて済む。
それが海にとって唯一の逃げだった。
ぽつぽつと空から水が降ってくると、大きいもの達は走り出す。海のことなど目もくれず、彼らは足早に去っていった。
降ってくる水が増えてくると、海の身体は泥だらけになった。蹴り飛ばされた時に出来た傷口に泥水が入って酷く痛む。ここから動かないといけないのは分かっていても、海には出来ない。
『……もうつかれた』
大きいものたちには蹴られ、小さいものには石を投げられる。自分と同じ見た目をしているものからは嫌われて威嚇された。
居場所がないなんてもんじゃない。自分の存在自体が周りのもの達を困らせている。そう気づいた時、生きている意味が分からなくなった。
他の猫たちには親がいる。父親と母親、そして兄弟。でも、自分には誰もいない。怪我をしたら心配してくれる母親も、良いことをしたら褒めてくれる父親も、共に遊んでくれる兄弟も。
海はずっと一人だ。
だったらいつまでもここで生きている理由なんてない。海が死んだところで誰も気づかないし悲しまない。むしろ自分は死んだ方が喜ばれるだろう。
次、眠ったら最後だ。全身の痛みから逃げられる。
でも、最後くらい……。
『だれ、か……ぼく……を……』
ちゃんと見て欲しかった。
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