狐と猫 2
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ん……』
寝苦しさを感じて目が覚めた。寝返りを打とうにも右にも左にも身体の向きを変えられない。布団の中を覗くと、霞と狐が海の背中とお腹に引っ付いて眠っていた。
「起きたか」
『十四郎?なんでここに……』
布団の側に座っていた十四郎は閉じていた目をゆっくりと開けて海と目を合わせる。暗い部屋の中でも彼の目は黒く輝いていた。
「こうなる前になんで呼ばなかった」
『こんな所に呼べないだろ』
「だったら山にいた時に言えばよかっただろうが」
『それどころじゃなかったって言えば許してくれんのか?』
「それでこんな事になってるんだろうが」
じとりと睨まれたが、海は反省すること無く笑った。
『それでわざわざここまで来たのかよ。人間の形をとってまで』
昔から烏天狗は人間と関わることを嫌う。妖怪が人里に下りてくる時は悪戯をする時か、人が妖怪にちょっかいをかけてその報復をする時だけだ。
そんな彼が人が沢山いる村の近くに来るなんて。
「約束を破る訳にはいかないだろう」
『どんだけ古いもん持ってきてんだよ。そんな約束時効だろ』
「てめぇが生きてる間は有効だろうよ」
深いため息をついた十四郎はうんざりとした顔で海を見る。
『そんなに嫌ならやめればいいだろ。約束した本人はもうこの世にいないんだから。破ったところで誰も責めはしない』
十四郎と、烏天狗と約束した人はもうこの世にはいない。彼女は海を十四郎に託して死んでしまった。
約束と言ったって、彼女が十四郎に無理矢理頼んだことだ。十四郎もあの時断っていたのだから約束なんて成立していない。それなのに約束だといってこの男は何十年と海のそばにいる。
「お前は俺がいないと死ぬだろ」
『そんなことはない。別に十四郎がいなくったってやっていける』
「妖力を溜めて置けないやつが何言ってやがる」
『溜められなくても使わなければ減らないだろ』
だから問題ないと突っぱねると、十四郎は不機嫌顔で海の頭へと手を伸ばし、低い声で呟いた。
「じゃあ、この耳はなんだ」
『触るな変態』
「てめぇの形もとれねぇほど妖力が枯渇してるやつが問題ねぇだと?笑わせんじゃねぇよ」
海の頭から出ているのは黒い耳。それは霞と同じ猫の耳だった。
.