狐と猫 2
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「お、おい!しっかりしろよ!」
倒れ込みそうになった身体に必死に手を伸ばして支える。
「どうすんだよ!」
「そっちに寝かせろ」
烏天狗は布団のある場所へと雑に指差す。黒猫も倒れた男の着物を噛んで引っ張った。
「俺一人じゃ運べないんだよ!手伝え!」
「化け狐ともあろう奴が情けねぇ」
舌打ちをしながら烏天狗は男を横抱きにして布団の方へと運ぶ。優しく布団の上に下ろしたあと、彼のおでこに手を当てて眉を顰めた。
「バカ野郎。何でもっと早く……」
「そいつ大丈夫なのか?」
「あ?熱が出てるんだよ。大方、てめぇが噛んだせいで菌が入ったんだろう」
苦しそうに眠っている彼に目を向ける。自分のせいでこの男は倒れたのだと知って、申し訳なさで胸がじくじくと痛んだ。
「ど、どうすれば……」
「治るまではそっとしておくしかねぇ」
「何もしないのかよ!」
「何も出来ねぇんだよ」
「そんなことないだろ!?なんか……なんかないのかよ!外にいるヤツらは!?あいつらは何か知ってるんじゃ……!」
この家の近くには村がある。そこにいる人間たちに聞けば、この男を治してくれるかもしれない。そう思って外へ出ようとしたが、烏天狗にしっぽをガシッと掴まれ止められた。
「あの人間どもがこいつに手を貸すと思うか?元はと言えばアイツらが変なことをしなければこんな事にはならなかったんだ」
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!そいつが死んだら……」
「誰がこいつを死なせるか。そんなこと心配するより、向こうから水持ってこい」
言いたいことは沢山あったが全部飲み込み、烏天狗の言う通り水を取りに行った。
「こんな身体じゃなければ……」
烏天狗のように大人の身体であればあの男の世話を出来たはずだ。
生まれたばかりの自分では何も出来ない。罠にかかっていた己を助けてくれた恩人すら救うことも出来ない自分を恨んだ。
「にゃう」
「お前、霞って呼ばれてたっけ」
男と共にいた黒猫。じっとこちらを見つめてきたかと思えば、今度は自分にもわかる言葉で文句を言ってきた。
"早くあの子に水を持っていけ。熱で倒れてから何も飲み食いしていないんだ"
「なんで外の奴らはアイツのこと助けてくれないんだ。同じ人間じゃないのかよ」
人間は群れる生き物じゃないのか。自分の中ではそういう存在だと思っている。あの男も人間なのだから彼らと共に生きているはずだ。
"あの者たちとこの子は違う。あんなゲス共と同じ括りにするな。次、同じことを言ったらお前の首を掻き切るぞ"
黒猫は怒った様子で床に爪を突き立てる。
霞が言った"ゲス"の意味が分からなかったが、村の人間とあの男を同じだと思ってはいけないらしい。
「意味わかんねぇ」
水を運びながら銀時はポツリと呟いた。
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