狐と猫 2
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十四郎と会った数日後、海は高熱で寝込んでいた。
原因は何となくだが分かっている。
じくじくと痛む右手をぼーっと見つめて、ため息をついた。
『霞、悪い……お前の飯……』
用意出来るほどの元気がない。身体は鉛のように重く、少しでも頭を動かせば割れるのではないかという程の痛みに襲われる。これでは霞のご飯はおろか、自分の食事も準備することが出来ない。
『かす……み、』
自分は食べなくてもいい。この状態では食べる気もおきないから。でも、霞には食事を摂らせたい。なんとか台所まで行くことが出来れば……。
それでも身体はいうことをきいてはくれない。
動けない海を霞はじっと見つめ、そしてふらりと家の外へと出ていってしまった。
『まっ……た……霞、待て……か、すみ!』
霞だけで外に出たら危ない。子供たちの恰好の餌食になってしまう。
それは霞もわかっているはずなのに。
『かす、み』
痛む頭を我慢してゆっくりと起き上がる。さーっと血の気が引いて吐き気を感じたが、それでも無理して立ち上がった。
壁に手を付きながらノロノロと玄関へと歩く。何度もその場に座り込みそうになったのを踏ん張って耐えたが、引き戸を前にして力尽きた。
『……かすみ』
また怪我をしたらどうしよう。もうあの黒猫は先は長くない。次、大怪我をしたら二度と立ち上がれなくなるだろう。
グルグルと嫌な考えが頭の中を駆け巡っていたとき、目の前の引き戸が何者かによって開けられた。
「あんた大丈夫かよ!」
「おい!動き回るんじゃねぇ!」
『と……し、ろ』
引き戸を開けたのは見知らぬ子供。ふわふわと揺れ動く銀色の髪と人間にはあるはずのない三角の耳が頭についていた。
座り込んでいる海の膝の上へとその子供は乗り上げ、俯いている海の顔を覗き込む。
「おっさん、この人顔真っ青!」
「おっさんじゃねぇ!海、てめぇなんで声かけなかった!」
『うるさい……』
ぐらぐらと子供に揺さぶられ、十四郎には頭上から怒鳴られる。元気な時だったら二人とも家から追い出せるが、今は黙って聞くことしか出来ない。
か細い声で少しばかりの反抗を示すと、十四郎は大きなため息をついて子供の頭を掴んで海から引き剥がした。
「寝ろ。そんなんで動き回るな」
『霞は……』
「そいつが俺と、このガキをここに連れてきたんだよ」
ひょこりと十四郎の足元から顔を出した霞。その口には小魚がくわえられていた。
『飯は……大丈夫そう、だな』
咥えていた魚を床に置き、霞は海の膝に前足をぽすっと乗せる。
ご飯の心配が無くなったと安心した刹那、身体の力が一気に抜けた。強い眠気に抗うことなどできる訳もなく、海はそのまま眠りに落ちた。
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