狐と猫
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「おい」
『これでもう大丈夫だろ』
「……おい」
『下は危ないから上の方にいけ。お前の毛皮なら寒さは凌げるだろ?』
「てめぇ、無視してんじゃねぇよ!」
狐の罠を外した頃、海の後ろに一人の男が音もなく現れた。
霞は男をちらりと見てからまた狐に目を戻す。
「てめぇ、何回同じこと繰り返すつもりだ」
『さあ、何回だろうな』
「ふざけんのもいい加減にしろ」
『ふざけたことなんて一度もない。しかもそれを言いたいのは俺の方だ』
突然現れた男に狐はまた低い唸り声をあげ始める。逃げようと起き上がるも、傷ついた足に力が入らないのかすぐに地面に倒れ込んでしまった。
『無理するな。上までは連れてってやるから』
ここに置いていけば村人達に見つかる。そうなれば狐は殺されるだろう。毛皮は高く売れるから。
「海、もうあの村は出ろ」
『そのつもりではいる。来週辺りには出るよ』
そう返すと、男が纏っている雰囲気が少しだけ柔らかくなった。
「ったく、なんであんなところにいつまでもいたんだ」
『あの村は霞が生まれた場所だからだよ』
「そんなもんお前には関係ないだろうが」
『俺に無くても霞にはある』
縮こまっている狐を抱き上げて男の方を振り返る。
「だからなんだって言うんだ。てめぇが傷ついても構わないって?」
『死にはしない。それに死んでも別に』
構わない。そう言った瞬間、男は背にある黒い翼を動かしてこちらへと飛んできた。
「二度と言うんじゃねぇ……!」
海の胸ぐらを掴み、ドスの効いた声で彼は怒りをあらわにする。
『そういう所はやたらと反応するよな、十四郎』
驚いて固まってしまった狐の頭を撫でながら海は苦笑いを浮かべた。
彼は昔からこうだ。海が少しでも死を連想させるような発言をすると怒り狂って止めようとしてくる。
「お前が死のうとするからだろうが!」
『別に死にたいとは言ってないだろ。結果的にそうなったらまぁ、仕方ねぇなってくらいで』
「仕方ねぇで済む問題じゃねぇだろう!お前はもう少し自分を大切にしろ!」
『烏天狗が人間の心配ねぇ?』
必死になって訴えてくる十四郎に思わず海は吹き出して笑ってしまった。そんなことをしてしまえば、益々十四郎の機嫌は悪くなっていく。
クスクス笑っている海に十四郎は憤慨し、狐は首を傾げる。側で見ていた霞は足元で寝転がっていた。
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