狐と猫
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『焼けた山菜の次は罠にかかった狐かよ』
霞が見ていたのは狐だった。
狐はこちらの存在に気づくと、低い声で吠えて後ずさろうと身体を動かす。
『霞、行くぞ』
「なーーう」
狐に背を向けて一歩踏み出す海に霞は不満げな鳴き声を漏らす。
『そんな声出しても助けねぇぞ』
罠にかかっている狐はその場から逃げようともがく。それを間近で霞は見つめていた。
『霞』
いくら呼んでも霞は狐の前から動こうとしない。海が狐を罠から外すまで動かないつもりか。
『俺は動物愛護団体じゃねぇんだよ……』
はぁ、とため息を漏らしながら仕方なく狐の元へと戻る。海が近づくにつれて狐の動きは激しくなり、足に絡まっているワイヤーがどんどんくい込んでいく。
『動くな。それ以上無理に動かせば折れるぞ』
低く唸る狐のそばに膝をつき、罠へと手を伸ばす。狐の足に触れた途端、甲高い鳴き声で叫ばれた。
『……おい』
ぽたり、と地面に赤が落ちる。
キッと海を睨みながら狐は海の右手を容赦なく噛んだ。鋭い牙は皮膚を突き破って深く刺さっている。流れ出る血は狐の口元を汚し、地面を赤く染めた。
『ああもう、それで気が済むなら噛んでろ』
ズキズキと痛む右手をそのままにして、狐の足に絡みついているワイヤーを左手で掴んだが、チクリと何かが刺さって反射的に手を引っ込めた。
『最近の罠はやけに手が込んでるな』
狐の足に絡まっているワイヤーは普通のものではなく、棘のついているタイプのものだった。捕まえた獲物を逃がさないようにするために改良されたものなのだろうけど、これでは獲物に傷がつく。
『怪我させたくて仕方ないってか?』
ここら辺は海たちがよくうろつく場所。そんなところにこんな罠を張るなんて、村人の魂胆が丸わかりすぎる。
『悪かったな。お前、巻き添えにして』
たまたまここに来た狐は自分らが掛かるようにと仕掛けられた罠にかかってしまった。理不尽な痛みに耐えていた狐に一言謝ると、右手を噛んでいた口がそっと離れていく。
じっと海を見定めるように見つめたのち、狐はそっぽ向いて地面に伏せた。
『なんだ?もう噛まなくていいのか?』
興味ないとでもいうように右手から目を逸らし、狐は遠くを見つめる。ただ、尻尾だけがふわふわと忙しなく動いていた。
『すぐ取ってやるから。もう少し我慢な』
なるべく棘が足に刺さらないようにしながらワイヤー外していく。狐の足から罠が外れた時、海の手はボロボロになっていた。
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