狐と猫
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『これは……酷いな』
いつも山菜を採っている場所に来た海は呆然のその場に立ち尽くした。
先週来た時は一面緑だったのに今では焼け野原のようになっている。元気に生えていた山菜も他の花も全部焼き尽くされて、残っているのは燃えカスだけ。
『悪ふざけにも程があるだろ。これじゃ山火事と変わらねぇよ』
誰がやったのかはすぐに見当がついた。この光景を見たのは今回が初めてではないからだ。
以前にも同じことをされている。その時は海が山に火を放ったのだと疑われ、村人たちから責め立てられた。
その翌日、子供らが山を燃やしたことを大人たちに自慢げに話しているのを見つけて絶句。
罪を擦り付けられたことはどうでもいい。それ以上に、子供が遊びで火を放ったということが問題だった。
『あいつら、この先生きていけるのか?』
付けた火は勝手に消えたりはしない。燃え移りやすい物が沢山ある山に火を放つなど自殺行為に近い。村は山の麓にある。山火事が起きた時、真っ先に被害に合うのは彼らなのに。
『一時の感情で行動すると身を滅ぼすぞ』
子供のしたことだからといって許せるものでもない。この火を消した者だってそろそろ怒るはずだ。
『……文句言われる前にここから離れるか』
"彼"はいつだって海に文句を言ってくる。それほど心配されているのだというのは理解してるのだが、今回ばかりは心配では済まなさそうだ。
『霞、今日は魚にするか』
焼けた草で遊んでいる霞に呼びかけ、海はめんどくさそうに山の奥へと足を向ける。
『生ものは日持ちしないんだよな。干物にすればいけるか?』
魚の保存は手間がかかるからあまり好きではない。そのため魚を取りに行くのも久しぶりだ。海の思いと裏腹に霞の方は喜んでいるようだが。
「なーう」
『霞?』
とてとて歩いていた霞がぴたりと足を止める。怪我が痛むのかと思って抱き上げたのだが、霞は海の腕からするりと逃げた。
『おい、どうしたんだ?』
一点を見つめたまま霞は微動だにしない。
不意に霞がこちらを振り向いて一鳴き。
『そこに何があるんだよ……』
見に行けと言わんばかりに霞はその場所を見つめ続けている。仕方なく視線の先へと向かうと、そこには見慣れないものがいた。
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