お迎えにあがります
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「銀さん!本当にそれ持っていくんですか!?」
「向こうはゴリラの首をご所望なんだろ。なら持っていくしかねェだろ」
「でも、そんなの持っていくなんて……」
新八は銀時が抱えている風呂敷を見つめる。正方形の箱を包んだ風呂敷からはポタリポタリと赤い雫が滴っていた。
「仕方ねぇだろ。こうするしか」
ここから先は子供の出番はない。そう言って銀時は風呂敷を持って指定の場所へと歩いていった。
銀時が指定された場所に着いた時には空はオレンジ色になっていた。かぶき町から少し離れた所にある廃工場。人っ子一人いない場所で、銀時は一人立っていた。
「なにこのいかにもって感じの雰囲気」
監禁するには丁度いい場所。人の通りが少ないため、誰かに見つかる恐れはない。もし、海か土方のどちらかが騒いだとしても、廃工場から民家までの距離は遠く、その声が誰かの耳に入ることは無いだろう。
悪用してくださいと言わんばかりの廃工場に銀時は苦笑いを浮かべるしか無かった。
「来たか」
ぼけっと廃工場を見つめていると、中から二人組の男が出てきた。
男は銀時の持つ風呂敷を見てギョッとし顔を背けた。
「マジで持ってきやがったよこいつ!」
「いや、おたくらがゴリラの首もってこいって言ったんだろうが」
「そうだけどよ……。マジで持ってくると思わねェじゃん?え、てか、それ生?」
「生」
ズイッと箱を男の胸元へと押し付けると、男は箱を受け取らずに銀時へと押し返した。
もってこいと言ったのはお前らだろうが、と呆れた顔をしつつ箱を持ち直す。箱を押し付けられた男の着物にはべっとりと赤い汁がついていた。
「あーっ!!付いた!血が付いたじゃねぇか!!!」
「うるせェなァ。血くらい見慣れてんだろうが」
「見慣れていても触りたいとは思わないだろうが!!」
「おい!遊んでないで早く連れていくぞ!」
ギャーギャー喧しく騒ぐ男にもう一人の奴が声をかける。周りを警戒する仕草をするところ、まだこちらの男の方がまともなのかもしれない。
男たちに連れられて銀時は廃工場の中を歩く。電気の通っていない工場の中は薄暗く、足元が覚束無い。暫く使われていなかったのか、空気も澱んでいてホコリ臭かった。
「ここだ」
錆び付いて重たくなった扉を男が開けて、中に入れと促される。部屋の中から漂う血の匂い。あぁ、ここに海がいると直感した。
「やっと来たか。おい、ちゃんと持ってきたのか?」
「お望み通り持ってきてやったよ。感謝しろよコノヤロー」
電話で聞いた声に銀時は腹の中でゆらりと湧き上がった怒りを感じた。
部屋に入ると扉は閉められる。部屋の中には男が三人。そして驚愕の顔で銀時を凝視している土方。
その近くにいる海。
「……首は持ってきてやったんだ。コイツらは解放しろ」
「中身を出せ」
電話の男が小刀を手にして海の側へと寄る。俯いたまま顔を上げない海。度重なる拷問のせいで意識がないのか、ピクリとも動かなかった。
「ったく、仕方ねぇな」
「万事屋……てめぇ、まさか!!!」
「あぁ、正真正銘……お前らの上司の首だよ」
地面に箱を置いて風呂敷の結び目を解く。四方に広がった風呂敷の中から出てきたのは、真っ赤に染まった木箱。ゆっくりと木箱の蓋を外すと、中から近藤の頭が現れた。
「万事屋ァァァァ!!!!!!!」
「仕方ねぇだろうが。てめぇら助けんのにコイツの首が必要だったんだ。コイツもお前ら守れんなら本望だってよ」
ガタガタと椅子を揺らす土方に冷たい目を向ける。殺してやる、と呟いている土方から電話の男へと目を移して近藤の頭を指差す。
「これでいいんだろ?」
男は近藤の頭を見て逡巡したのち、ゲラゲラと笑い始めた。
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