お迎えにあがります
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい!!電話があったって本当か!?」
「来たか、万事屋」
朔夜と共に屯所の会議室へと転がるようにして入った。
そこには神妙な面持ちの近藤と同じく渋い顔をした総悟が座っていた。
「相手はなんて言ってきてんだよ」
「近藤さんの首を寄越せ、と」
「は?」
「でないと……」
総悟は銀時に携帯を差し出す。銀時が差し出された携帯を受け取って開こうとした時、総悟が神楽と新八を呼びつけた。
「おい、テメェらはちょっとこっち来い」
「なにアルか!」
「いいから来なせェ。海さんと土方さんの救出作戦立てるぞ」
銀時が画面を見るよりも先に神楽と新八を銀時から引き剥がす。総悟は銀時に目配せをしてから、新八たちとツラを合わせて話し始めた。
「…………な、んだよこれ」
一人になった銀時が見たのは想像を絶するもの。携帯の画面に映し出されたのはボロボロになった海。椅子に座る海の周りのコンクリートの壁と地面には海の血らしきものが飛び散っていた。
「俺の首を出さないのであれば……保証はない。そうだ」
近藤は固まっている子供らに一瞬視線を向けてから銀時へと向き直った。子供たちには海がこんな状態であることを伝えていないのだろう。総悟も新八と神楽と朔夜の目に入らぬようにした。
「どうするつもりなんだよ」
「俺の首一つで済むなら……」
「バカ言ってんじゃねェ!そんな事してアイツらがどう思うか知ってんだろうが!」
近藤の一言に銀時は声を荒らげた。突然叫んだ銀時に驚いた子供たちは何事かと二人を凝視する。
「そんなの分かってる!でも、こうするより他はないだろう!」
それでは相手の思うツボになるじゃないかと近藤にぶつけようとした時、銀時の手の中にある携帯が震えた。
画面を見るとそこには非通知の文字。
「……万事屋」
「俺が出る」
携帯を渡せ、と手を出てきた近藤を無視して銀時は電話に出た。
「もしもし」
"あ?さっきの奴とは違うじゃねェか"
「あー、ほら。お前が突然電話してきたからさっきのやつメンタルボロボロになっちゃったんだよ。そんで今代わりに俺が出てんの」
相手は「はぁ?」と言いながらそばにいる誰かと話していた。電話をしている男と複数人の声が耳に入り、誘拐犯は複数人だと判明した。
"まぁいいわ。んで?どうすんだ?局長の首出せんのか?"
「それなんだけどさァ。なんでそんなにゴリラの首が欲しいワケ?」
"いや、ゴリラじゃねェよ。真選組局長の首差し出せって言ってんの"
「だからゴリラの首だろうが」
"ゴリラじゃねェっつの!!"
「あ!?コイツはどっからどう見たってゴリラだろうが!!」
「ちょっと銀さん!」
電話の相手に怒鳴る銀時に落ち着くようにと新八が銀時の着物を引っ張った。
"もういいわ、ゴリラでも局長でも。とりあえず首出せや。そしたらアンタらの仲間は解放してやるよ"
「その前に生きてるか確認させろ」
"あ?"
心配そうに銀時を見つめてくる子供たちから離れるように銀時は会議室から縁側へと出た。電話口の男は「仕方ねぇな」と呟いた。
"ほら、喋ろ"
男が誰かに喋るように指示するが、相手は黙り込んだまま。男の声が遠いことからして、携帯はその相手の耳へと押し当てられているのだろう。
「……海」
"…………ぎ、ん?"
ポツリと聞こえた声は掠れていた。海の弱々しい声に顔が歪み、右手を強く握りしめた。
「すぐ助けに行くから待ってろ。いいな?」
"ん……"
返事をするのもしんどいと言いたげに海は小さく声を出した。
「後で、謝りたいこともあるし」
"あ、やま……る?"
「うん。ちょっと先走っちまった。ごめんな」
きっと海は意味がわからないという顔をしているだろう。でも、伝えずにはいられない。海を疑ってしまった罪を償うように銀時は海に謝った。
"これでわかったろ"
また話したいことがあるのに、電話は海から男へと代わってしまった。愉しげに笑い声をあげる男に歯噛みして、銀時は了承の返事をした。
"持ってくんの待ってるぜ"
男は近藤の首の受け渡し場所を告げると、こちらの返答も聞かずに電話を一方的に切った。
「銀ちゃん……!」
「ゴリラ」
「覚悟は出来てる。いつでもいいぞ」
携帯を閉じた銀時は目を閉じて座っている近藤を見やる。海を救うには近藤の首を持っていくしかない。
「……悪く思うなよ?」
銀時は止めようとしてくる子供たちを外へと放り出し、会議室の襖を静かに閉めた。
.