狐の嫁入り
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雲ひとつない晴天。空からは容赦なく太陽の光が道行く人に降り注いでいる。そんな天気の中、海と土方はいつもの巡回をしていた。
『土方、今度の会議に使う書類の話だけど……』
「それはもう決まってるんじゃなかったのか?」
『総悟がまた新しく攘夷浪士の潜伏場所の情報を持ってきた。近藤さんにはもう報告してあるが、一度整理しておきたい。突入部隊の編成も組み直さねぇと』
今、目をつけている浪士たちはこれまで何度もテロを起こしている過激派だ。次の会議で情報共有を行い今後の作戦について相談する予定である。
監察である山崎と一番隊隊長の総悟が攘夷浪士らに目を光らせてくれていたから集まった情報。海と土方でこうして表立って動き回っていたから手に入りやすかっただろう。
「それと書類となんの関係があるんだ」
『纏めてあるやつを全部修正する』
「修正するって……どんだけ時間掛かるんだ」
『徹夜すれば一日で終わる。大体の内容はもう頭に入ってるしな』
そう言った海の頭へと土方の拳が落ちる。突然のことに驚きつつ何事かと土方を見ると、これでもかと海を睨んでいる目。
「てめぇは徹夜することしか頭にねぇのか?」
『会議に間に合わせるにはそれしかない。書類ごときで遅らせる訳にはいかないだろ』
「だからっててめぇが徹夜してまでやることはねぇだろう!」
『じゃあ誰がやるんだ?近藤さんは上への報告で忙しいし、お前だって隊の編成をするから書類作成なんかやってる暇なんてないだろ』
そうなると動ける人間は限られてくる。屯所の中で書類をまともに書けるのは海くらいしかいない。
しかもこの情報量を他の隊士たちが理解できるように説明しなければならないのだ。会議で近藤が話すとはいえ、質問無く円滑に進めるには書類は不可欠となる。
だから多少の無理をしてでも作るべきだと土方に説いたのだが、逆に油を注ぐ結果となった。
「お前はそうやって何でもかんでも一人でやろうとするな!」
『今回ばかりは仕方ないだろ』
「仕方ないで済ませるな!お前はいつもそれじゃねぇか!」
『やれる人間がいないんだからこうなるのは必然だ。文句を言うなら書類作成をできる人間を育成してくれ』
「だったら山崎にでもなんでも頼めばいいだろうが!」
『あいつは攘夷浪士どもを監視してるから戻せないのは知ってるだろ』
土方の言いたいことは分からなくもないが、今はそんな事を気にしている暇は無い。
『徹夜なんてよくやってるんだから今更だろ。一日で済むのならまだ良い方だ』
「てめぇ人の気も知らねぇでッ!」
ガシッと胸ぐらを掴まれたその瞬間、土方の手にぽつんと水が落ちる。ぽたぽたと落ちてきたそれは次第に強くなり、あっという間に海と土方を濡らしていった。
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