祭囃子
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『…………祭りか』
どこからともなく聞こえてくる祭りの笛の音。耳を澄ませば笛だけでなく太鼓の音も聞こえてきた。風に乗って香る甘い匂いが鼻へと抜けていく。
近くでは天人と攘夷志士が戦っているのにも関わらず、ここの村の人達は呑気だなぁなんて苦笑いを浮かべた。
夕飯の支度をしながら祭りの音を聞く。
今夜は銀時も桂も作戦のため拠点からその姿を消している。今、ここにいるのは少数の志士。そいつらの中で炊き出しができる人間なんて限られていて、仕方なく自分が今日の夕飯作りを担っていた。
『これだけあれば足りるだろ』
銀時と桂たちはまだ帰ってくる予定は無い。ここにいる人数を考えればこれだけで足りるはずだと頷く。握ったおにぎりを拠点としている廃屋のボロい机の上に置き、その横におかずとしてたくあんやら焼き魚を置いておいた。
「出来たか」
『うん。食べるなら先食べてていいよ』
「海は食わねぇのか?」
『んー、食べるけど……』
ちらりと廃屋の外へと目を向ける。外には疲れて座り込む仲間の姿。彼らが先に食べて、残った分を自分が食べた方がいいだろう。怪我をしているのであれば、その分栄養を取らせないと。
『俺は後ででいいかな』
「遠慮なんかすんじゃねぇよ」
『してないしてない。ほら、晋助は食べなよ。俺は包帯洗ってきちゃうから』
「一人で動き回るんじゃねぇ。一緒に行くから待ってろ」
そう言って晋助はおにぎりを一つ手に取り、持っていた紙を部屋に置いてくるべくその場を立ち去った。少ししてから晋助は戻ってきて廃屋を出る。その後を慌てて追いかけて行き、共に近くの川へと歩いた。
『そういえば近く祭りやってるみたいなんだよな』
「呑気なこった。目と鼻の先で殺し合いしてるってのによォ」
『まぁ、村の人たちには関係ないといえば関係ないからな』
「はっ、天人どもに蹂躙されても同じことが出来んのか見ものだな」
『そういうこと言うなよ。何も知らない方が幸せな時だってあんだから』
聞こえてくる祭りの音に口元を緩ませる。
楽しそうにはしゃいでいる子供たちの高い声。何も知らない彼らが幸せそうにしているのが少し羨ましく感じる。
『祭りか……いいな』
ぽつりと呟きながら血にまみれた包帯を川へと沈める。それを黙って見つめていた晋助が俺の後ろで小さくため息をついていた。
「……行きてぇのか?」
『え?』
「祭り、行きてぇのか?」
『そりゃ行きたいっちゃ行きたいけど……ここを離れるわけにはいかないだろ』
「少しくらいなら大丈夫だろ」
『晋助?』
「行きてぇなら連れてってやる。ただし、30分だけだ」
ガバッと晋助の方へと振り返ると、晋助は仏頂面で俺のことを見ていた。仕方ねぇからついていってやる。そう言っているように見える。
『……行きたい……祭り見たい!』
「はぁ……なら早くそれ洗っちまえ」
『うん!』
にやける顔をそのままに俺は包帯を急いで洗い、晋助へと向き直る。今にも飛び跳ねそうな気分で廃屋へと戻り、包帯を木に吊るして乾かした。
そして辺りが暗くなった頃に廃屋を晋助と一緒に抜け出して祭りをやっている神社へと向かった。
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