事件ファイル(1)後編
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「今回の騒動を引き起こした犯人は以前捕まえた攘夷浪士の残党で間違いないです」
『そうか。主犯のやつは見つけたのか?』
「へい。江戸から出ようとしていたところを」
『よくやった。屯所に戻り次第、俺が取り調べをするから』
「了解でーす」
緩い返事をした総悟は捕まえた攘夷浪士を誘導している朔夜の元へと駆け寄る。その後を見送ってから海は黙って話を聞いていた銀時の方へと顔を向けた。
『黒にした理由はなんだったんだ?』
「え?だからなんとなくだって」
『なんとなくで俺たちの命運が決められるのか』
「いや、うーん……」
困った顔で銀時は空を見上げる。暫し考え込んでから、銀時は意を決したように口を開いた。
「その……色的にそうかなって」
『色?』
「真選組って黒のイメージだろ?」
『まあ、隊服も黒いし……』
「アイツらは真選組を"斬りたい"わけでしょ?」
『それで黒を選んだと?』
黒を切る事で真選組を斬ったという風に思いたいのか。そんな子供のイタズラのようなやり方で。
「それくらい恨みがこもってたってことだろ」
『その理論だと銀時もうちに恨みを抱いてるってことか?』
「なんでそうなんのよ」
『悩むことなく黒を選んだだろお前』
「いや、それは……ほら、こういうことかなぁって……?」
苦笑いを浮かべながら銀時は海から視線を逸らす。
強い恨みはなくとも、多少なりとも真選組に対して思うことはあるだろう。何が原因なのかは分かってはいるが。
『そんなにいがみ合うことはないだろ。大体、銀時がいつも土方にちょっかい出してるからアイツもムキになって言い返してるんだろうが』
「はあ!?俺がいつちょっかい出したって!?それを言うならアイツが先に手を出してきたんだろ!」
『ほっとけばいい話じゃないのかよ』
「出来るもんならやってんの!つか、お前がアイツといつも一緒にいんのが悪いんだろうが!」
『なんで俺のせいになるんだよ』
「人の気も知らねぇでベタベタベタベタしやがって!」
『は?』
銀時の表情に段々と怒りが滲み出してきたとき、横から朔夜が顔を出してきた。
「兄さん、今ちょっといい?」
『どうした?』
「兄さんに頼まれたことやったんだけどさ」
『ああ、見つかったのか?』
「うん……でも……」
俯いて口ごもる朔夜に何となく察した。
「なに?何の話?」
『朔夜に予め指示を出してたんだ。もしかしたら攘夷浪士が関わってるかもしれないと思って。近藤さんに声を掛けるように。それと戸坂の妹を探すようにって』
「妹を?なんで?」
『戸坂と共謀していたのなら捕まえるため。それと……妹が人質にされている場合だったら保護するために』
だから朔夜に電話したのだが、どうやら一歩遅かったようだ。
「妹さん……殺されてた。その……」
「朔夜、その件の報告は俺がする。お前はあっちの手伝いに行ってやれ」
「総悟……」
朔夜がこの場を離れるのを待ってから総悟は海の方へと向き直る。
「戸坂の妹、戸坂
『そうか』
「死因はまだ特定されてませんが、遺体の状況から察するにショック死じゃないかと」
『ショック死?』
「ええ。外傷は見当たらなかったんですけど、暴行された跡がありやして」
『ゲス共が……』
総悟が報告を変わった理由がわかった。これは確かに言いづらいだろう。
戸坂の妹は攘夷浪士らに弄ばれたのだ。戸坂が一人、海たちを殺そうと奮闘している間に。
「このことは戸坂には……」
『詳しく言う必要は無い。亡くなったことだけ伝えろ』
「へい」
『総悟』
「なんです?」
『部屋、開けておけ』
海の言葉に総悟は一瞬驚いた表情を見せ、ちらりと近藤の方を見た。
「……近藤さんに言われません?」
『今回は許してくれんだろ』
「近藤さんに怒られても知りやせんよ?」
『何とかするさ』
そうですか、と総悟は一言零して立ち去る。
「部屋って何すんの?」
『取り調べ』
「それだけじゃないだろ」
『相手が大人しく話すとは思わないからな。多少は……覚悟してもらうが』
これだけのことをしでかしたのだからそれ相応の罰は受けてもらわなければ。
『一日もてばいいほうか?』
「えげつな。俺はそんなふうに育てた覚えは無いけど」
『育ててもらった記憶もないな』
帰ったら忙しくなるだろう。攘夷浪士の拷問に報告書の提出、そして伊敷山病院内の仕掛けの完全撤去と建物の解体。考えることが山積みで頭が痛くなってしまう。
『オムライス食いたいな』
「まだ言ってんの!?あんなに食ったのに!?」
『腹減ったんだから仕方ないだろ』
「他のやつにしろって言っただろうが!お前暫くオムライス禁止な!」
それを言うなら銀時は糖分の摂取を控えた方がいいんじゃないかと思う。そっちは医者から注意されているというのに。人の栄養云々を言う前に自分の身体の事を考えろと言いたい。
『はいはい』
「ダメだって言ってんだろうが!!」
『しつこい!』
うだうだと言ってくる銀時を蹴り飛ばす。やっと静かになったかと思えば、今度は土方がグチグチと文句を言いに来たのでそちらも蹴り飛ばした。
『騒がしい!うるせぇし、しつこいんだよお前らは!』
倒れ込んで動かなくなった二人にため息をつき、海は一人屯所へと帰った。
(事件ファイル1完)
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