事件ファイル(1)後編
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「どうすんのよコレ」
フラフラしていた山崎を見つけ、屋上から外に出るように指示をしたのち、階下に置いてあった爆弾を全て回収した。銀時と海の前には三つの爆弾。どれもタイマーは動いていて、残り三分となっていた。
『どうにかするしかないだろ……』
「どうにかって……お前、爆弾の処理の仕方わかんのかよ」
銀時の問いに海は渋い顔で黙り込む。
「下手に手を出さねぇで、外に放り出しちまった方がいいだろ。町からは離れてんだから被害も出ねぇだろうし」
『これがどれだけの威力を持ってるのか分からない以上、その手は使えない。放り出した結果、近くの町ごと吹っ飛ばしました、なんてシャレにならないだろ』
「まあ……」
正論すぎて今度は銀時が何も言えなくなってしまった。
海の言う通り、爆弾の威力までは把握してない。一つだけならまだしも、ここには三つある。全て起爆したとき、どれだけの被害が出るかまでは考えていなかった。
『少なくともここを吹っ飛ばす程の威力はあるだろ。だから階に一つずつ置いたんだろうし』
「じゃあ、相手は俺たちごとこの病院を壊そうとしてるってことかよ」
『真選組も万事屋も。そして攘夷浪士の手足となって動いていた戸坂も消そうとしたんだろ』
「アイツは仲間じゃねぇのか」
『単に利用されただけだ。どうやって丸め込んだのかは知らないが』
爆弾の話が出たとき、戸坂はとても驚いていた。攘夷浪士と手を組んでいたのであれば知っていてもおかしくないこと。それなのにあの反応を示したのだ。最初から戸坂は使い捨ての駒として扱われていたのかもしれない。
可哀想だ、とは思わないでおく。事情があったにせよ、戸坂は海に危害を加えたのだ。よく分からない薬まで使って。
『銀時、お前先に病院出てろ』
「は?なんで?」
『何があるか分からないから。止めるつもりではいるけど、間違えたら命は無い』
爆弾の蓋を開けて配線と睨めっこし始める海に銀時は首を横に振る。
「行くわけねぇだろ。海を残して行けるかよ」
『新八と神楽が心配するぞ』
「それはお前もだろ。ゴリラやマヨラーになんて説明すんだ。怒られんのは俺なんだけど」
『適当に言えばいいだろ』
「それが聞かないのがアイツらなの。いい加減認めたら?」
『何を』
「お前はただの隊士じゃないって。アイツらからすっげぇ大事にされてる仲間だってよ」
過去の事があるから海は未だに近藤たちと一線置いている節がある。身バレした時に彼らがショックを受けないように。そして、海自信が傷つくことの無いように壁を作っている。
「(アイツらなら海の過去を知っても刀を向けるようなことはしねぇと思うけど)」
バレたならバレたで考えればいい。もし、海が指名手配にされたら一緒に逃げてしまえばいいのだから。
『別に俺は……』
「はいはい。認めるも認めないも海の自由だけど。少しくらいは気遣ってやってもいいんじゃねぇの?仲間だと思ってるならさ」
だからここで死ぬ事を考えるなと言えば、海は小さく頷いた。
「で?どうやって止めんの?こんなごちゃごちゃのコード見て分かんの?」
『どこかにタイマーを止める線があるはず』
「そんなテレビみてぇに見つかるもんなの?」
『さあ?以前、桂が教えてくれたんだよ。爆弾の解除方法』
「ヅラに?てか、お前ヅラとあってんの?」
『会ってるというか、見廻りの途中で捕まったというか』
一人で見廻りをしていた際に桂に見つかって連れていかれた。ご飯は食べているのか、ちゃんと休みを取っているのかと質問攻めされ、海は戸惑いながらも大丈夫だと返したらしい。
『なんか新しい爆弾について意見が欲しいとかって言われて話を聞いたんだよ。その時に爆弾の解除方法を聞いた。まさか教えてもらえるとは思ってなかったけど』
「馬鹿だから。アイツ馬鹿だから。なんも考えてねぇんだよ」
『そのおかげで今があると思えば、その馬鹿さ加減も許せるだろ』
そう言って海は二本の配線を引っ張り出してきた。白と黒のコードを見て、海は唸る。
『さて、どちらを切るか』
「……黒だろ」
『黒?』
「何となくだけど」
『そのなんとなくに俺たちの命がかかってるんだが?』
「じゃあお前は?どっちだと思うの?」
銀時の問いに海は考え込む。
『それは……』
どちらにすればいいのか分からないと言いたげだ。そりゃ簡単に決められるような事じゃないだろう。
「こういうのは悩んだら負けなんだよ。その場の勢いでスパッとやっちまった方がいいだろ」
海の手にある黒のコードを手に取る。近くに落ちていたガラスの破片を取って、それを配線へと押し当てる。
『お、おい!』
「へーきへーき。もし爆発しても……一人じゃねぇんだから」
死ぬ時は一緒に。心配しなくていいと呟いてから銀時は黒のコードを切った。
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