風邪の日(土方ver)
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ちゅんちゅんっと小鳥の鳴く声で覚醒する。左腕にずしりと重いものが乗っかっている感覚。指先が少し痺れていた。まだ眠い頭で左腕の方を見ると、すやすやと眠る海の頭。そして両手で俺のシャツを握っていた。
「海……」
あぁ、昨日そのまま海の部屋で一緒に寝たんだっけかと思い出した。自分の部屋に帰って寝てもよかったのだが、夜中に海が起きて自分がいないと気づいてボロボロ泣き出すのは可哀想だと思ったのだ。
そういえばと思い出して海の額へと手を置く。昨日はかなり熱かったのだが、今はそれも落ち着いたのかだいぶ落ち着いていた。
「下がったか。よく頑張ったな」
汗で濡れた前髪を払ってやると、幾分か楽になっている顔が見えた。
「何を頑張ったんですかい?土方コノヤロー」
「……なんでてめぇがここにいんだよ」
「朝ごはんを一緒に食べに行こうと思って寄っただけでさぁ。土方さん、俺は見損ないましたぜ。体調が悪い人を夜這いするなんざ男の風上にも置けやしねぇ」
「待て、誤解だ!俺は夜這いなんかしてねぇ!」
がちゃりと自分に向けられるバズーカに冷や汗が垂れる。総悟から不穏な雰囲気が漂っているのが見なくてもわかる。
「じゃあ何を頑張ったですかい?夜に頑張ることなんざ1つしかありやせんよ。アンタ……海さんと……」
「だからしてねぇって言ってんだろうが!」
「土方さん……俺ァナニも言ってねぇですぜ」
嵌められた。
にやりと笑う総悟がバズーカのトリガーを引く。白煙を撒き散らしながらこちらへと飛んでくる弾。そんな至近距離で撃たれれば逃げることも出来ず、俺は咄嗟に海の体を抱きしめた。
が、その前にかちゃりと刀の鳴る音。そして自分の上に覆い被さる影。
『総悟……てめぇ、人の部屋で何してやがる』
ゴンッと畳の上に落ちたのは真っ二つになったバズーカの弾。そして左手で刀の柄を持つ海。俺の顔の横に右手をつき、半ば馬乗りの体制で俺の上に居た。
「そいつが海さんを襲ったみたいなことを言うもんですから、ちょっとお仕置きをと思っただけでさぁ」
『俺にも当たるだろうが……』
「俺はスナイパーと呼ばれたい男ですぜ?海さんには当てやせん」
『呼ばれたじゃなくて呼ばれたいだろうが!願望じゃねぇか!』
「わー、海さんが怒ったー」
ドタバタと総悟が海の部屋から逃げていく。深いため息をついた海が刀を鞘へと戻す。それを見つめている俺に気づいて、海はじとりと俺を睨む。
『お前も止めろよな』
「止めても聞かねぇのがアイツだろうが」
『ほんと年上の威厳がねぇな。土方は』
「……なんだもう名前で呼ばねぇのか」
『は?』
「いや、なんでもねぇ」
いつもの苗字呼びに戻ったのが少し寂しく、つい声をかけてしまった。海から訝しげな顔を向けられてはこちらもそれ以上何も言えない。
俺の上から海が身を引く。どうやら風邪の方は少し良くなったのか、昨日みたくフラフラとした足取りではなかった。
『さて、朝飯でも食いに行くか』
「あ?あぁ」
『ほら、早く立てよ……十四郎』
「あぁ……あ?……あぁ!?」
『先行ってるぞー』
さらりと呼ばれた自身の名前に驚いて飛び起きる。既に海は部屋から消えていて、他の隊士達に挨拶している声が廊下から聞こえてきた。
「……あいつ魔性かなにかなのか?」
今度は自分が顔を赤くさせる番。
立ち上がろうとした時に手に当たった物を見て耳まで赤くする。夜中にずっと海が抱きしめていたであろう自分の上着に海の残り香。
思わず上着を抱きしめていた。
「ふ、副長……何してるんですか……」
「……山崎ィ……てめぇ、腹斬れぇ」
タイミング悪く海の部屋の前を通った山崎が顔を赤くした土方に追いかけ回されたのはまた別の話。
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