事件ファイル(1)後編
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「どう?何か思い出せそうか?」
『ううん。何も』
適当に一階をフラフラしてみるも海の記憶は戻らなかった。
仕掛けも入口にあったものの他に設置されておらず、何事もなく済んだ。
「今日のところはここまでだ。帰るぞ」
病院内に入って記憶が戻らないのであれば、もうここにいる必要はないと土方は海の手を取る。
「え、副長!帰るんですか?」
「当たり前だろうが。こんな所にいつまでもこいつを居させられるか!記憶があるならまだしも、何も覚えてねぇやつを仕掛けだらけの場所をフラフラさせられねぇ」
「で、でも史彦の方はどうするんですか!?」
「それは後日調査に来ればいいだろうが!」
土方の言いたいことは分かる。こんな所に長くは居させたくないという気持ちは。
『土方さん』
「あ?文句なら聞かねぇぞ」
『文句なんてないよ。でももう引き返すのは無理だと思うんです』
「は?」
「海の言う通り。無理だと思うよ」
「てめえら何言って──」
「銀さん!土方さん!!げ、玄関が閉まってます!」
「銀ちゃん!出られなくなってるアル!」
「どういう意味だそれは!!」
困惑する土方に海と銀時は目を合わせて頷く。
『さっき入口の方から物音が聞こえて、新八くんたちに見に行ってもらってたんです』
一階の部屋を見て回っていた時に聞こえた音。海が気づいて見に行こうとしていたのを銀時が引き止めた。海を行かせる代わりにと新八と神楽が見に行ったのだ。
「シャッターみたいのが降ろされてて外に出られないんです!」
「クソッ!山崎!他の出入口はどこだ!」
「出入口ですか!?」
見取り図を見て必死に探す山崎に海がそっと寄り添う。
『無いんだ。他の出入口』
「え……」
『一階には無いんだよ。出るとしたら屋上。外階段で下りるしかないよ』
屋上の見取り図を引っ張り出して海は外階段と書かれているところを指差す。
「上に行くしかねぇってことか」
『うん……』
屋上に行くしか道は無い。そう言った海は申し訳なさそうに俯く。
『ごめんなさい。僕のせいで』
「海のせいじゃねぇよ。むしろ悪かったな……無理矢理連れてきちまって」
海が謝ることなんて一つもない。謝らなければいけないのは自分の方だ。地雷だらけの道を歩かせ、今度は仕掛け塗れの病院内を徘徊させなければならない。一歩間違えれば死ぬ恐れのある場所だ。
「怖い思いさせて悪い」
『ううん。大丈夫。銀時さんが……皆がいるから平気』
大丈夫だと強がって笑ってみせるが、繋いだままの手は微かに震えている。
『屋上に行ってみよう?』
海の一声で動き出す。上階へと行く階段を前にして、山崎が何か思い出したように土方に声を掛けた。
「副長、そういえばこの鍵ってまだ使えますかね。非常階段の」
「あ?あー……そんなもんがあったか」
「これが使えるならあっちの方が安全じゃないですか?」
誰でも通れる階段よりも、鍵のかかっている非常階段の方が安全だと山崎は訴える。
「返しそびれたとかってやつ?」
「うっ……なんで万事屋の旦那が知ってるんですかそれ」
「そこの副長さんから聞いた」
「副長!鍵を返す前に史彦を帰したのは副長じゃないですか!」
「あ?知るか」
どうやら山崎が管理を怠ったのではなく、土方が確認を怠ったの間違いらしい。自分は関係ないとそっぽ向く土方に山崎が必死に自分は悪くないと訴えている。
「銀ちゃん私ら帰れるアルか?」
「何言ってんだよ。帰るに決まってんだろうが」
「屋上に行くよりあのシャッター壊した方が早いネ」
「そんなゴリラみたいな事はしません」
神楽なら確かに壊せそうだが、余計な事をして別の問題が起きたら厄介だ。出来ることなら今すぐ海を外に出したいけど。
「あのー、お二人さん?こんな所で騒ぐのやめてもらっていいですかね。俺たち早く帰りたいんだけど」
騒いでいる土方たちに声をかけて非常口の階段を開けさせる。中はホコリ臭くて長居したくない空気。
「海、大丈夫か?」
『うん……銀時さんたちは大丈夫?』
「こっちはへーき」
「僕は大丈夫です」
「私もネ」
『良かった。無理しないでね』
こんな状況でも海は子供らの身を一番に考えている。どっかのマヨラーと違って。
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