事件ファイル(1)後編
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「銀さん!待ってください」
「え?なによ」
病院の前にたどり着いたと思ったら新八に止まるように声をかけられる。その隣で山崎が何度も頷いて。
「この間、海さんがここを歩いてた時に爆発したんです」
「そうそう!ここは沢山の地雷が埋まって……って、え!?また埋められてるんですか!?」
ガサガサと見取り図を取り出す山崎の周りを銀時たちは囲うように立つ。
「えっと……どこら辺だったっけ神楽ちゃん」
「多分、真ん中くらいだったヨ」
「補佐はここから病院の入口真っ直ぐ歩いて行ったの?」
こくりと頷く子供らに山崎は青ざめた顔をする。
「ふ、副長……!」
「設置し直されてんな。万事屋、てめえもここ歩いてんだろ。そん時もあったのか」
「そんなもんねぇよ」
銀時がここに来た時は何も無かった。地雷なんて埋まっていたら引っ掛かっていたはずだ。
「てめえを囮として後から来たやつを殺そうとしてたっていう海の推測は正しかったみてぇだな」
「じゃ、じゃあ……僕たちのことを……」
「気に食わねぇと思ってる奴がいるってことか」
人から恨まれることは慣れている。だから今更なんとも思わないが、新八や神楽が標的にされているのはどうにかしなければならない。自分だけが狙われるならまだしも彼らはまだ子供。相手からしたらそんなこと関係ないかもしれないが。
「でも、仕掛けを張っていた伊敷山の院長は投獄されている身ですよ?一体誰が……」
「息子しかいねぇだろ。伊敷山病院の今の所有者は息子である伊敷山
「そいつ今どこにいんの?」
「行方不明なんです。父親が投獄されて、伊敷山病院を引き継いでから」
行方不明だった息子が突然出てきたかと思えば、万事屋を始末するために廃病院に罠を張った。あまりにも突拍子なことで納得がいかない。
「そもそもその伊敷山 史彦?ってやつ知らないんだけど」
「知らねぇ間に恨みを買うなんざ、てめえも図太く生きてるじゃねぇか」
「あんたと一緒にしないでくれる?俺は真っ当に生きてるんですー。こんな善良な市民を狙うなんて頭おかしいんじゃねぇの?」
手間隙かけてまで銀時たちを殺そうとするなんて。相手は相当頭が狂っているのか、それとも物凄い暇人か。
「どちらにせよそいつもとっちめねぇと俺達も危ねぇじゃん」
海の記憶を取り戻すのと同時に息子の史彦も探さねばならなくなった。やる事が増えたことに銀時はため息をつく。
「まずは……ここをどうするかだな」
建物までの道。軽く三十メートルあるであろう砂利道をどうやって進むかだ。
適当に進んでしまったら地雷に足を持っていかれる。地雷を踏み抜いてしまった海が足を失っていなかったということは、避けられるだけの猶予があるということ。でも、ここに居る者全員ができるかと言ったら無理に等しい。
『あっちに行きたいの?』
「そうなんだけどね?ここに爆弾があるんだって」
だから勝手に行ったらダメよと海の手を取ろうとしたのだが、海は銀時の手からすり抜けるように歩き出す。
「海ッ!待て!」
『大丈夫だよ、ほら!』
数歩進んだ先で海は飛び跳ねる。その姿を見た誰もが顔を青ざめた。
「海さん!?大丈夫なんですか!?え、ちょ銀さん!!」
「海!!こっちに戻ってきなさい!良い子だから!!ね!?」
『大丈夫なのに』
むう、と頬を膨らませながらこちらへと戻ってくる。今度は離れないようにしっかりと手を繋いで。
「勝手に行くな!何かあったらどうすんだお前は!」
『だって銀時さんたち困ってたから』
「困ってたからって……お前ねぇ」
『それにちゃんと"見えてる"から大丈夫だよ?』
「見えるってなにが?」
すいっと海は地面を指さす。目を凝らしてその先を見ると確かに何かが見える。
『あれは見えてるから大丈夫でしょ?』
地面の中から微かに見えている銀色の何か。それは太陽の光を反射して光っていた。
「おいおい、ところどころ見えてんじゃねぇか」
どうやら罠を設置した者は確認を怠ったらしい。埋められている地雷がところどころ見えてしまっている。これなら海の言う通り大丈夫そうだ。
「先に俺が行ってくっから。お前らはあとから来い」
『僕も一緒に行く!』
「海はここで待ってなさい」
『やだ』
「やだじゃありません!」
ダメだと何度言っても海は頑なについて行こうと銀時の羽織を掴む。その手を振り払おうとしても海は中々離れない。
「海、いい加減に──」
『危ないから』
「え?」
『危ないからついていくの』
「危ないのは俺じゃなくて海の方なんだけど?」
どれだけ言っても海は銀時から手を離さない。
『ダメ……?』
この顔には弱い。お願い、と小首傾げて懇願するこの顔は見ていられない。普段は絶対こんな顔しないから余計目に悪くて困る。
「~~~っ!その代わり絶対に手を離すなよ!?」
『わーい!』
喜ぶ海に銀時は肩をガックリと落とす。
「銀さん……」
「情けないアル」
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