事件ファイル(1)中編
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「おいこら、ガキは早く寝ろ!」
「ガキじゃないアル。立派なレディーヨ」
「立派なレディーならもう寝てる時間ですけど?美肌の為に睡眠時間はきっちりとってると思いますけど??」
銀時の寝室で騒いでいる神楽と新八に声をかけるも、二人は落ち着くこと無く喋り続けていた。
「ったく。海が泊まりに来たってだけで何がそんなに楽しいんだか」
「銀さんだって嬉しいんじゃないんですか?」
「お前らみたいにはしゃいだりしませんー」
「何言ってるネ。海が泊まるからってさっきからニヤニヤしてる癖に」
「してないけど!?別にそんなにニヤニヤしてませんけど!?」
「いや、銀さん……そんな手をワキワキさせながら言わないでください。気持ち悪いです」
「メガネに言われたくねぇよ」
「メガネにとはなんだ!メガネにとは!!」
うるさいと声をかけたはずなのに一緒になって騒いでいたら元も子もない。
ごほん、と咳払いをして気を鎮めてから海の方を見る。
布団の上にちょこんと座っている海はもう銀時たちの声をまともに聞き取れてはいなさそうだ。今にもストンッと寝落ちてしまいそうな顔で頑張って意識を繋いでいる。
「海、眠いならもう寝ちゃえよ」
「すみません、僕たちがうるさかったから眠れないですよね」
『うむ、にむぬ』
「あの、銀さん海さんなんて言ってるんですか?」
「眠いって言ってんじゃねぇの?」
何を言っているのかも分からない。多分本人も何言ってんのか分かってないだろう。
「ほら、もう布団入って寝ちまえ」
軽く肩を押しただけで海の身体はグラりと傾く。布団を掛けて、背中を優しく撫でてやれば数分もしないうちに穏やかな寝息が聞こえてくる。
「銀ちゃん、海寝ちゃったアルか?」
「寝てるけど?」
海の横に寝転がって銀時も布団の中へと潜り込む。本当は別々の布団で寝るはずだったのだが、新八も泊まることになったので一緒の布団で寝ることになった。記憶を無くしてからずっと銀時と一緒に寝ていたので、嫌がられることなく受け入れられている。むしろ銀時がそばにいないと眠れないのではないかという程くっついてきているのだ。
胸元へと擦り寄ってくる海を抱きしめつつ神楽たちの方を見ると、二人は不安そうな顔で天井を見つめていた。
「いつ記憶戻るアルか」
「それはわかんねぇって言ったろ」
「このまま戻らないってことも……あるんですよね?」
「さあな……」
薬による記憶喪失の場合はどうなるのか。医者でもお手上げの状態なのに。
「戻っても戻らなくても海には違わねぇよ」
「そうですね……僕たちで海さんのこと守ってあげましょう」
「悪いヤツ来たら私がボコボコにしてやるネ!」
「(だってよ。だから安心してお眠り)」
銀時の腕の中で小さくぐずっている海を優しく抱きしめる。何も怖いことは無い。ここにいる者で守るから。
出来ることなら。君が見ている夢の中に入って助けることが出来たなら、なんて柄にもないことを考えてしまった。
「銀さん」
「あ?まだ起きてんの?」
「以前、テレビで見たことがあるんですけど……記憶喪失になった人の記憶を取り戻すのに、その人が最後に行った場所に行くといいって聞いたんです」
「なんだそれ。最後に行った場所って病院じゃねぇか」
「なんだっけ、確かショック療法?とかって。その場所に行ってフラッシュバックを起こさせれば、もしかしたら戻るかもしれないって」
テレビの話だから確証は無いのだがと新八は笑う。確かに記憶を辿るという意味では有効な手立てかもしれない。
「あの廃病院に連れてくってことか」
伊敷山病院で海の記憶が戻るかは微妙なところだ。仕事で関わりがあっただけであって、あそこに深い思い入れがあるわけではないだろう。でも、最後に立ち寄った場所と言えばあの廃病院になる。
万事屋に来ても、屯所に行っても海は記憶を取り戻さなかった。口ではゆっくり思い出せばいいと言ったが、本心では早く戻って欲しいと思っているのだ。
「一か八か……連れてってみるか」
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