事件ファイル(1)中編
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「この人がクソマヨラーで、この人はゴリラです」
『まよらー?ごりら?』
「総悟てめぇなにしてんだ」
「土方さんのこと教えてるんですよ。クソマヨラーって」
「たたっ斬んぞてめぇ!!」
「ちょっと騒ぐなら外出てくんない?うるさいんだけど」
次の日、海が検査を受けている間に土方たちは銀時の病室に来た。土方と総悟、そして海の様子を見に来た近藤に海の状態を説明したら、当然のごとく銀時は土方に攻め立てられた。
「万事屋、海の記憶は戻りそうなのか?」
「頭ん中の検査では異常はなかったってよ。ただ、血液検査で俺と同じもんが出てきた」
やはり銀時に使われた薬と同じ成分が採血で判明した。しかも銀時が使われた倍の量を使われており、そのせいで記憶障害が強く出ているのかもしれない。
他にも薬剤の成分が出てきたのだが、医者は見たことの無いものだと言って首を傾げていた。地球産の薬ではなく、外から持ち込まれた薬物だろうと調べている。
そっちの薬物は何となく察したので、銀時は何も言わずに流したが。
「で?そっちはどうなんだよ」
「あの日、夜間の見廻りに出たやつが四人いた。その内の一人がどうやら見廻りの途中で居なくなったらしい」
「朔夜が言ってたやつか……そいつが海に飯持ってきたって?」
「いや、妹と会ってたそうだ」
「妹だぁ?」
見廻りの途中でそいつは妹を見かけて声をかけた。真夜中に出かけるなんて危ないと声をかけ、家まで送っていったとのこと。勝手に居なくなったことでペアを組んでいた隊士と喧嘩をし、今は反省中だと土方は呆れた様子で言った。
「じゃあそいつは病院に来てねぇってことか」
「そうなる。そもそもウチにいるわけねぇだろうが。コイツに薬を盛ろうとするやつなんて」
「となると攘夷浪士が海に薬を盛ったってことになるよな……」
「海さんの知り合いを使ってってことですか」
「コイツの知り合いなんてたかが知れてる。全員に聞き込みを入れれば自ずと分かんだろ」
そう簡単にいくとは思えない。海の知り合いとなれば、もっと有り得ないのだ。全員を把握しているわけじゃないから絶対とは言いきれない。でも、海が疑うことなくおにぎりに手をつけたということは、相手に対しての信頼度が高いということ。
それほど信用している者は銀時の知り合いにもなってくる。お妙や月詠、柳生などが筆頭だ。彼女らが海にそんな薬を盛るとは考えにくい。脅されても屈しないタイプの者たちだ。絶対にやらない。
『……銀時さん』
「……ん?どうした?」
くいっと服を引っ張られて思考の海から浮き上がる。
『あ、の……』
言いづらそうに海はモゴモゴと口ごもる。どうしたのかと待ってみると、腹の虫がぐうっと鳴いた。
「あ、腹減ったのね」
『ごめん、なさい』
「謝ることじゃねぇだろ。朝から検査ばっかで飯食えなかったもんな。何食いたい?」
『なんでもいいんですか?』
「食いたいもん言えよ。そこの目つき悪いお兄さんが買ってきてくれっから」
「誰が目つき悪いって!?」
『それじゃ……オムライス食べたいです!』
「ほんと好きなソレ」
昔からの好物だ。記憶が無くともそれは変わらないらしい。
「オムライスだってよ多串くん」
「誰が多串くんだ!!ったく……めんどくせぇの言いやがって」
ブツブツ文句を言いつつも土方は一人病室を出ていった。
「海さん、ついでにプリンも買ってきてもらいやしょうぜ」
『プリンも?いいの?』
「へい。マヨラーに買ってもらうんで」
土方の後を追って総悟も部屋を出ていく。廊下で土方が怒鳴っているのが聞こえるも、その声はすぐに静かになった。
「万事屋、この件は本当に攘夷浪士がやったもんだと思うか?」
「あ?そうなったんじゃねぇのかよ」
残った近藤は未だに難しそうな顔をして考え込んでいた。
「俺は仲間を疑いたくねぇが……どうもきな臭ぇ」
「アンタのところの疑いは晴れたんだからいいんじゃねぇの?そもそもお宅は色んなとこから恨み買ってんでしょうが」
警察となれば恨まれて当然だ。攘夷浪士だけでなく、天人や他の犯罪者からも目の敵にされている。
海を狙ったのもその内に誰かに違いない。
「でもよ、海が昨日ここに居たことを知ってんのは俺らだけなんだぞ?」
「そんなもん海のあとを追ってたら分かることだろ」
「そうなんだけどよ……」
歯切れの悪い近藤に銀時は段々と苛立ちが芽生える。この男は一体何が言いたいんだ。
「海が見張るって言うから大丈夫だと思ってはいたんだが、一応、この病室の階には真選組と万事屋んとこの子供らだけを通すように言付けてたんだ」
「なんだそれ」
「幸い、この階の入院患者はお前さんだけでな。看護師さんたちもそんなに忙しくねぇっていうから頼んどいたんだよ」
「じゃあ、この階には……」
「ああ。"真選組と新八くんたちしか入れない"」
ナースステーションは階の入口真ん前にある。だからこの階に来た人物は一度は看護師と顔を合わせることになるのだ。例え海の知り合いだと言い張っても、近藤が事前に言っていた人物以外は通さないように言ってある。
逆に伝えられている人物らであれば中に入れるということ。
「お前それは……」
「念の為、もう一度調べた方が良さそうだな」
真選組内部に犯人がいる。近藤はそう結論づけた。
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