事件ファイル(1)中編
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「ん……」
もぞっと何かが動いた気がして目が覚めた。腕の中の海はまだ起きそうもない。
「疲れたもんな」
眠っている海の頭を優しく撫でる。汗で髪がぺたりとしていて触り心地が少し悪い。起きたらシャワーを浴びさせた方が良いだろう。身体も冷えているだろうし、中のものも掻き出せてないから。
海を抱き直して二度寝をしようと目を閉じる。うとうとしてきたところで、扉の方が騒がしくなってきた。
「あれ?なんで開かないの?」
「鍵掛けられるんですかい?」
「いえ、病室には鍵はありません」
看護師の声と総悟の声。そして扉をガタガタと揺らす音で銀時は完全に目が覚めてしまった。
「あー……めんどくせぇな。外しにいかねぇとか」
扉にはまだ刀が引っ掛けてある状態だ。銀時が外さなければ誰も開けられない。
「はいはい。今外しに行きますよ」
海を起こさないようにゆっくり腕を引き抜いてベッドを下りる。そして立ち上がったのだが、やたらと下半身が涼しかった。
「あっぶね!パンツパンツ!」
剥ぎ取られたパンツとズボンを布団の中から探し出して扉の方へと歩く。
「おい!万事屋!てめぇ何してやがる!」
「ちょっと!他の患者さんの迷惑になります!」
大声で銀時を呼びながら土方は扉を叩く。看護師が必死に止めるも土方は気にせず続けている。
「騒がしいったらありゃしねぇ」
引っ掛けていた刀を引き抜き、扉を勢いよく開ける。
「おい、うるせぇよ!海が起きちまうだろうが!」
扉の先には困り顔の看護師とキレる寸前の土方。
「おはようございます旦那」
「なんなの?朝っぱらから。迷惑すぎない?」
「てめえ、海はどうした!」
「あ?海ならベッドで寝てるけど?つか騒がしくするなら帰ってくんない?」
看護師から朝食を受け取ってから銀時は扉をぴしゃりと閉める。
「ふざけてんじゃねぇぞてめえ!!」
「ダメですよ土方さん。さっき看護師に怒られたじゃないですか」
「知るか!」
ベッドに腰掛けたところで土方が怒鳴りながら病室へと足を踏み入れてくる。二人が中に入る前に海の方を確認して布団を掛け直した。
「あらら、海さんすやすや寝てますぜ」
「起こせ!見張るとか言っておきながら何やってんだコイツは!」
「やめろ。寝かしといてやれ」
「だそうですけど」
海を揺すり起こそうとした総悟を止めつつ、盆に乗せられているご飯をじっと眺める。
病院のものだから心配は無いと思うが、一応確認をしといたほうがいいだろう。もし毒味をしてみて大丈夫そうであれば海に食べさせなくては。
「てめえが寝かしやがったのか。勝手なことをしやがって」
「うるせぇって言ってんだろうが。んなことよりお前らに聞きたいことがある」
「なんです?」
「昨日の夜中、ここに誰かを寄越したか?」
「いえ。誰も行かせてないですよ」
「そんなわけないだろ。確かに誰かが来てた。そいつのせいで海はこの状態だからな」
「どういうことですか」
昨晩の話を掻い摘んで土方たちに聞かせてから再度聞く。
「病室の前で海は誰かと話してた。それにこいつは警戒心が強いのは知ってるだろ。知らねぇやつからもらったものは口にしない。海が飯に口をつけたってことはお前らの仲間が来てたんじゃねぇのか」
真選組の隊士であれば有り得る。海は仲間だと認識した相手にはとことん甘くなる性格だから。
隊士であれば、誰であろうと疑いもせずに口にするだろう。
「何が言いたいんだてめえ」
「アンタらのお仲間さんの誰かが海に薬を盛ったって言ってんだよ」
ギリッと睨んでくる土方に銀時は睨み返す。
「探しておけ。じゃねぇとお前らのところには返さない」
海を狙っている奴がいるところになんて返せるわけがない。誰がそうなのか分からない状況で海を返そうものなら、この子は全員を疑わなければならなくなる。そうなったら心労は計り知れない。
「いいか。お前らがそいつを炙り出すまで、海はうちで預かるからな」
苛立ちの表情で土方は歯噛みをするが、総悟が止めて首を横に振る。
「わかりやした。昨晩、屯所を出たものが居ないか調べます。廊下に置いてあるやつも調べとくんで」
「ああ。そうしてくれ」
「そういえば海さんは一体なんの薬を盛られたんで?」
「えっ?あー……それはお子ちゃまには言えねぇよ」
そろりと目線を外す。総悟は不思議そうな顔をしてからにやあと気持ち悪い笑みを浮かべた。
「ああなるほど。それで"寝かしておけ"ですかい」
「余計なこと言ってないでさっさと行けよコノヤロウ!」
意味がわかってない土方だけが、銀時と総悟のやり取りを見て首を傾げていた。
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