事件ファイル(1)前編
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かたん、っと外から物音が聞こえて銀時は目を開ける。
「海?」
土方たちが帰ってから全くといっていいほど外から物音はしなかったのに今微かに音がした。
「てかアイツ飯食ったのか?」
銀時を探し出して病院まで連れてきてくれたのだ。そんな余裕はなかっただろう。その状態で見張りをするなど酷なこと。
「確か近くにコンビニあったよなここ」
空腹で見張りをさせるのは可哀想だ。そう思って銀時はベッドから下りた。
「痛ェ……これじゃまともに歩けねぇな」
歩こうと足に力を入れるだけでズキッとした痛みが左足に広がる。起きた時には既に包帯でぐるぐる巻きにされていたから今どういう状態になっているかは分からない。医者には骨が見えているから絶対安静だと言われた。
「なんでそんなグロテスクな状態になってんの?マジで俺何したの?」
記憶が無いとは恐ろしい。こんなに酷い怪我をしたというのに全く覚えていないのだから。
点滴スタンドを支えにして壁伝いで扉まで歩く。経った数歩の距離なのに汗だくになってしまった。
「疲れた……これ便所に行くのも一苦労だな。つーかこのまま行くか。ちょっと海くん手伝ってよ」
扉を開けて廊下に居るであろう海に声をかける。
「海?」
病室の前に設置されている長椅子に座っていると思っていた海はぐったりと横になっていた。足元にはペットボトルとおにぎりの食べかけが転がっている。
「海?おい、お前なにして……」
様子がおかしい。声をかけても海は起き上がろうとしない。
「海!」
嫌な予感がして慌てて駆け寄る。横になっている海の肩に手を掛けると小さく声が聞こえた。
『んっ……や、』
「は?え??」
なんとも艶めかしい声。驚いて手を引っ込めると、閉じていた瞼がゆるりと開いた。
『ぎ……んとき』
「おい!何があった!お前……なんでそんな」
『あつい』
とろりとした眼差しで海は呟く。その表情はまるで情事中のようだ。
「待て待て待て!なにやってんの!?ここ病院だけど!?」
『うる、さい』
「文句だけは立派だな!?てか、本当に何してんのよ」
『しらな……』
起き上がろうとする海に手を貸して椅子に座らせる。その間にも海は小さく声を漏らしていて銀時をドギマギとさせた。
「と、とりあえず中に一旦入れ。そんな顔で置いておけるわけねぇだろ」
転がっている飲み物とおにぎりを椅子に置き、海の手を引く。緩慢な動きで部屋に入っていく海を訝しげに見つつ銀時は扉を閉めた。
「……一応、一応ね」
扉の取っ手に海の刀を引っ掛けて外から扉が開けられないように細工をした。なんとなくそうした方がいいと思ったからだ。土方や総悟が来ないと分かっていても。
「ほら海。そこ座んなさい」
ベッドに座るように促すと海は素直に腰掛ける。相変わらず顔は真っ赤で、視点も定まっていない。
「で?なに?その状態はいつからなの」
『さっき……きゅうに』
「なんか変なもんでも食べたの?床におにぎり転がってたけど」
銀時の問いに海は黙り込む。
「黙ってたらわかんないんだけど?」
俯いている海の顔を覗き込もうと身を寄せると、ぐらりと身体が傾いてきた。
「どうしたんだよ」
『あつい、ぎん、あつい』
「あつい?今日そんなに暑くなんか──」
その時気づいた。なんとなく下の方を見た時に目に映ったもの。
「海……お前なんで……勃ってんの……?」
ズボン越しに海のものが主張しているのが分かる。
そっと触れてみるとぬちゃりと濡れているではないか。
『やっ、あ……』
「なになになに!?どういう状況これ!」
完全に勃っている。しかもズボンの濡れ具合からして一度射精をしているだろう。
病院内で、しかも見張りをしている間に海は射精したのか。仕事にしか興味が無いような人間が?
「ほんとにお前何があったわけ?」
一度イッているのにまだ足りないというように海のものは固くなっている。この状態は明らかにおかしい。
まるでそっち系のビデオに出てくる薬を盛られた女優みたいで──。
「まさか……お前……」
床に転がっていたおにぎり。そして飲みかけのペットボトル。あのどれかに薬が盛られていたとしたら。
「海!お前、あの飯誰からもらった!」
必死に呼びかけるも海はもう理性を無くしつつある。これでは誰から受け取ったものなのか分からない。
「クソッ……!」
海の性格上、知らない人間からのものは口にしないはず。そうなると顔見知りの者からもらっているはずだ。
一体誰が海に媚薬を持ったのか。
「考えるよりも先にどうにかしてやんねぇと」
熱に浮かされて苦しそうにしている海をそのままにはしておけない。
ベッドに寝かせてやれば、海は物欲しそうな顔で銀時を見上げる。
「今、楽にしてやっから」
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