風邪の日(土方ver)
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「ほら、布団敷いてやったから大人しく寝てろ」
『…………』
「そんな所で寝てんじゃねぇよ」
『寝てない』
柱に寄りかかりながら土方が布団を敷き終わるのをただ黙ってじっと見ていた。手に持つ書類を廊下に置いて俺に手を差し出してくるが、俺はその手を取らずにムスッとした顔を土方に向けた。
「なにが気に食わねぇんだよ」
『別に』
「ガキかてめぇは」
『……違う』
むくれたり落ち込んだりとめんどくさいだろうな俺。熱のせいだからと言いたくはないのだが、明らかに普段よりもわがままな態度を取ってしまう自分がなんとも情けない。
どっか行って欲しいような、そばにいて欲しいような。そんな思いがグルグルと回る。
「……熱、上がっちまうぞ」
『ん……』
こつんっと額に土方の額が当たる。目の前には土方の端正な顔。あー、こいつって黙っていればこんなかっこいいんだなぁなんて思う。確かにそこらの女性がほっとかないわけだわ。
「おい、なんで今そのタイミングで泣くんだよ」
土方の顔が近づいた時にほろりと落ちた涙。それを見て苦笑いを浮かべて震える肩。そんなに俺の事嫌いかてめぇはとかよくわかんない勘違いをしている土方に誤解だと伝えることも出来ず、風邪の時の癖が出てしまった。
『……っ……ふっ……』
「あぁ!?おま、え、はぁ!?」
ぼろぼろと声も出さずに泣き始める俺に戸惑う土方。どうすればいいのかわからずにわたわたと手を動かす。
『ほっ……とけ……』
「放っておけるわけねぇだろが!」
『ぐす……うっ……』
「てか、そんなとこで泣くな!俺が泣かしたみてぇになんだろ!」
泣きじゃくる俺にため息を漏らしながら、土方は俺の背中と膝裏を腕で支えて横抱きにし自室へと戻される。布団の上にゆっくりと降ろされすぐに掛け布団が体を覆う。
「大人しく寝てろ。ったく……」
布団の上からぽんぽんっと撫でてから土方は立ち上がり襖へと手をかける。一瞬こちらへと振り返って俺が大人しく横になっているのを確認してから襖を開けて縁側へと出た。
「今日はもう何もすんじゃねぇぞ。そんなんで動き回ってたらたたっ斬るからな」
『…………』
「聞いてんのか?」
『……とうしろ』
「……あ……?」
『行かないで、十四郎』
「…………は?」
布団の中から腕を出して土方へと伸ばす。ぼそりと土方の名前を呼んだ俺を見て固まる土方は頬を朱に染めていた。
暫く固まっていた土方が深いため息をつきながらまた部屋の中へと足を踏み入れる。
「ちょっと待ってろ。書類ここでやっから」
『行っちゃうのかよ……』
「すぐ戻る。なんならこれ持ってろ」
そう言って着ていた隊服の上着を脱いで俺に渡す。上着から香るタバコの匂いと土方の匂い。思わず上着に抱きつくと土方が息を呑んだ。
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